TRENDIA CLASSIC

雉子のはなし

小泉八雲

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昔、尾州遠山の里に若い農夫とその妻が住んでいた。家は山の間の淋しい場所にあった。

ある夜妻は夢を見た。その夢に数年前になくなった舅が来て『明日自分は非常に危険な目に遇うから、できるなら助けてくれ』と云った。朝になってこの事を夫に話した。二人とも、死んだ人が何か用があるのだろうとは思ったが、その夢の言葉は何の意味か分らなかった。

朝飯の後、夫は畠へ行ったが妻は機織のために家に残った。やがて外の方で大きな騒ぎが聞えたので驚いて出てみると、地頭が大勢の伴をつれて狩猟のためにこの辺へ近づいて来た。見ているうちに一羽の雉子がわきの方から家の中へ飛び込んだ。そこで不図昨夜の夢を想い出した。『事によればこれが舅かもしれない。助けて上げねばなるまい』――彼女は独りで思案した。それから鳥のあとから急いで家に入って――その鳥は綺麗な雄鳥であった――造作なくそれを捕えて、空の米櫃の中に入れて蓋をしておいた。

しばらくして地頭の従者が幾人か入って来て、雉子を見なかったかと尋ねた。大胆にも彼女は否定したが、猟人の一人はその家へ鳥の飛び込むのをたしかに見たと云った。それから一行は家の中をあちらこちらとさがしたが、米櫃の中には気付かなかった。そのあたりくまなく捜索したが結局無駄であったので、鳥はどこか穴からでも逃げたに相違ないとあきらめて人々は引き上げた。

農夫が家に帰った時、妻は夫に見せるために米櫃に隠しておいた雉子の話をした。

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