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TORENDIA

茶碗の中

本文約2,100字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

天和四年元旦、江戸本郷の茶店で休憩中だった若党・關内は、茶碗に注いだ茶の中に、見知らぬ美しい侍の顔が映り込んでいるのを見つける。不気味に思いながらも、その茶を飲み干した關内であったが、その日の夕刻、邸内に謎の侍・式部平内が現れ、茶の中に映った顔と同じ姿で対峙する。主人の仇と名乗る者と、さらに後日現れた配下たちを巡る、不可解で断片的な怪異譚を収める。

小泉八雲

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🎧 茶碗の中 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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読者はどこか古い塔の階段を上って、真黒の中をまったてに上って行って、さてその真黒の真中に、蜘蛛の巣のかかった処が終りで外には何もないことを見出したことがありませんか。あるいは絶壁に沿うて切り開いてある海ぞいの道をたどって行って、結局一つ曲るとすぐごつごつした断崖になっていることを見出したことはありませんか。こういう経験の感情的価値は――文学上から見れば――その時起された感覚の強さと、その感覚の記憶の鮮かさによってきまる。

ところで日本の古い話し本に、今云った事と殆んど同じ感情的経験を起させる小説の断片が、不思議にも残っている。……多分、作者は無精だったのであろう、あるいは出版書肆と喧嘩したのであろう、いや事によれば作者はその小さな机から不意に呼ばれて、かえって来なかったのであろう、あるいはまたその文章の丁度真中で死の神が筆を止めさせたのであろう。とにかく何故この話が結末をつけないで、そのままになっているのか、誰にも分らない。……私は一つ代表的なのを選ぶ。

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