牛の丸焼
本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
イースター島に伝わる土中に穴を掘り食材を蒸し焼きにする料理法、クラントウを紹介する。著者は考古学者ヘイエルダールの探検記を通じ、この島が抱える巨大石像の謎や、先住民の秘蔵品が眠る秘密の洞窟の存在を綴る。洞窟へ入る際のアク・アクという守護霊を鎮める儀式としての調理や、石像運搬の礼として牛を丸ごと一匹蒸し焼きにする豪快な光景を描き、原始的ながらも高度な調理法としての魅力を論じる。
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だいぶ前のことであるが、「西洋の浜焼」という題で、チリーのインディアンの料理の話を書いたことがある。
それはクラントウという料理であって、肉と野菜とを、幅の広い木の葉でつつんで、土の中に埋めて焼いたものである。これは現在、チリーの南端にあるフエゴ島の土人だけにしか残っていない料理法で、チリーやアルゼンチンの人たちもほとんど知らない、珍しい料理である。
ところが最近変った本が出て、南太平洋の孤島イースター島の土人も、現在この料理をやっていることを知った。そしてこの料理法で、牛を一匹丸焼にすることもあることを知って、非常におどろいた。まことに規模雄大な話である。
この本は Aku-Aku(アク・アク)という珍しい表題の本であって、著者はノルウェーの考古学者 Thor Heyerdahl である。というよりも、有名な「コンティキ漂流記」の著者といった方がわかりやすいであろう。この本は、世界十何カ国語に翻訳され、日本でもだいぶ評判になった、途方もなく面白い本である。こんど出た Aku-Aku は、コンティキの続編ともいうべき本で、これも既に数カ国語に翻訳され、世界的に評判になりつつある本である。(註 これを書いたあと、日本訳も既に出ているという話をきいて、ちょっと驚いた。山田晃訳・上下各二八〇円・光文社刊)
イースター島は、南米と濠州との中間、南太平洋のまんなかにある孤島で、いわゆるポリネシア群島に属している。長さ十二マイル、幅八マイルくらいの小さい島であって、広袤数千マイルの南太平洋の中では、砂粒のような島である。