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TORENDIA

シカゴの雉子

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

シカゴ郊外の住宅地に暮らす筆者は、窓辺に現れる野兎や近隣で目撃される野生の雉子を通して、自然が身近に残るアメリカの環境を観察する。野生動物が都会に共存する背景には保護政策だけでなく、国家としての歴史が浅いという点が大きく関わっていることを指摘する。新興国ゆえの矛盾や若さが社会のあらゆる面に反映されていると捉え、アメリカという国の特性や国民性、そしてそこに漂う独特の価値観を随筆として綴る。

中谷宇吉郎

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🎧 シカゴの雉子 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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今年のシカゴは、何十年ぶりとかの、雪の少ない年であった。おかげで芝生はもうすっかり緑の姿をとり戻し、新しい芝の芽が、春の光に生き生きと萌え出してきた。

天気の良い日が、毎日のようにつづく。この頃土曜や日曜の朝は、おそい朝食のあと、ぼんやりと食堂の窓から、朝の陽光に映えている芝生を眺めて、しばらくの時を過ごすことにしている。

芝生には、いろいろな小鳥や、野生の動物がやって来る。妻が時々パンの屑を芝生にまいてやるので、それを食べに来るのである。小鳥は、いろいろな種類が来るので、名前はとてもおぼえられない。けだものの方は、普通は木鼠であるが、昨日の朝などは、突然、野兎が一匹、ひょっくり顔を出して、小鳥たちの仲間に入って、パン屑を拾い出したのには、一寸驚いた。腹の方が白く、背中が褐色で、猫くらいの大きさの兎である。

こういう話をすると、よほど辺鄙なところと思われるかもしれないが、この辺のウィネツカという町は、シカゴとは町つづきで、東京でいったら、成城町くらいのところである。そういうところに、野生の兎がいたり、少し町はずれに出ると、林があって、雉子が、時々道路へ出て来て、自動車に轢かれることがあるそうである。先日妻が、グリンベイという、シカゴとその北部の住宅地帯とを結ぶ、一番賑かな通りで、雉子が轢かれて死んでいるのを見たと言っていた。新宿を一寸離れたさきの甲州街道、まず代田橋のあたりで、雉子が自動車に轢かれるような話なのである。

こういうふうに、野生動物が、都会の近くにも沢山棲んでいることが、アメリカの一つの特徴である。政府が野生動物の保護に熱心であり、一般の人々も生き物に対して親愛の情を持っていることが、一つの原因である。その点については、公園内の木鼠や雀の例で、既によく言われているとおりである。しかしその他に、今一つもっと大きい理由があるように、私には思われる。それは国が新しいということである。アメリカという国は、案外に新しい国なのである。

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