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TORENDIA

ムーア灯

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

数十尺から二百尺に及ぶ長大な硝子管を用いた照明、ムーア灯について綴る。室内の隅々まで照らし、陰影をなくすために開発されたこの灯は、希薄な気体中を電流が通る際の放光を利用する。管内の気圧を自動調整する仕掛けや、封入する気体による光色の変化、柔らかな光と眼への負担の少なさという利点を解説する。一方で、管の破損による全損の危険性や、高圧電流を必要とする設備面での課題についても詳しく論じる。

寺田寅彦

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🎧 ムーア灯 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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一個の電灯の長さ数十尺より二百尺に達すると聞いては誰しも驚かぬ人はあるまい。この驚くべく長い管で出来た電灯は、その発明者ディー・マクファーラン・ムーアの名に依ってムーア灯と名づけられている。始めてこの灯が世に出たのは既に十余年の昔であるが、その後だんだんに改良を加え、漸く実用に適するようになったのは昨今の事である。近頃英国で著名の某大旅館にこれを点じたため、急に世間の注意を引く事となった。

こんなに長い電灯を何のために作るだろうかと尋ねてみると、これは物好きでも酔興でもない。つまり、なるべく大きな光源を作って、物の陰影をなくし、昼を欺くようにしたいからである。普通の電灯、その他のあらゆる灯火は、光を出す部分が小さいから、これに照らされる物体の陰影は大きくて暗い、沢山の電灯を点じ連ねても、どうしても室の隅、器具の隈には光が行き渡らぬ。それでもし一室の内をぐるりと取り巻く大きな硝子管の中が一体に光るようなものが出来れば、この不便をよほどなくする事が出来るだろう。ここに述べるムーア灯は正にこの注文に応じて出来たもので、室ならばその鴨居の後ろに隠れた長い管が、一面に光を放って天井を照らし、室内は不夜の境となるのである。

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