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TORENDIA

最後の獨裁者

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

アルゼンチンのペロンが多年にわたる独裁政権から追放され、国外へ逃亡するまでの経緯と背景を綴る。労働組合と陸軍高級将校という二つの基盤を金銭的な利益で掌握した独裁者の統治手法を分析し、経営を無視した賃上げによる経済破綻とインフレの進行を描く。カソリック弾圧を契機とした軍部の不満の爆発と、金銭的打算で結びついていた支持基盤の離反を論じ、独裁体制の崩壊をもたらした構造的な要因を鋭く指摘する。

中谷宇吉郎

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🎧 最後の獨裁者 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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アルゼンチンのペロンが遂に失脚した。ほとんど最後の獨裁者といってよかったペロンも、到頭多年に亙る獨裁政權から追放されて、危く國外に身をもって逃れる悲境に陷った。前にこの話の中に、アルゼンチンのインフレの話を書いたが、あれから一月も經たないうちに、最後の破局に到達したわけである。

今回のクーデターは、カソリック彈壓の餘波が、多年の軍部の不滿を爆發に導いたといわれている。そういう意味では、中世紀的な宗教鬪爭の匂いがあるが、本當の原因は經濟的なところにあるのではないかと思われる。

ペロンが獨裁者としてアルゼンチンに君臨出來たのは、二つの強力な基盤をもっていたからである。一つは組合員六百萬と誇稱した勞働組合であり、いま一つは陸軍の高級將校たちであった。前回の海軍によるクーデターが失敗に歸したのは、陸軍がペロン側についたからである。ペロンがこれ等の擁護者を獲得したのは、主として利をもって誘った傾きがあった。例えば、陸軍の高級將校たちには「特別許可」を與えて、自動車を一臺無税で輸入する權利を與えた。それで將校たちは、アメリカから一臺三千弗の自動車を輸入して、即日闇で一萬弗に賣ることが出來た。

勞働組合の方は、もっと大規模であって、獨裁者の庇護のもとに、たびたびストライキを行い、その都度賃金を飛躍的に値上げさせて來た。それで今までシャツ一枚も持てなかった勞働者たちには、ペロン、とくに勞働者の女神ペロン夫人は、鑚仰の的であった。もともと貧富の差の激しいところで、勞働者たちの生活水準を上げるという目的だけならば、ペロンの施策は正しかった。しかしペロンは、自己の獨裁基盤を作り上げるために、勞働組合を「買收」した點において謬っていた。即ち經營を無視して賃上げを斷行したのである。

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