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TORENDIA

社交税

本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

ミシガン湖沿いに並ぶシカゴの高級店は、単なる服飾店ではなく、客がマネキンの披露を眺めながら酒や食事を楽しむ娯楽場である。そこで注文される服には、些細な手直しや単なる展示であっても多額の費用が加算される。本書は、こうした高級店における過剰な料金を一種の社交税と捉え、富裕層が他者からの承認を得るために支払う対価としての意味を、アメリカ社会の経済循環の観点から論じる。

中谷宇吉郎

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🎧 社交税 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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シカゴの街は、ミシガン湖に沿って、南北にずっとのびている。このミシガン湖にすぐ沿ったところが、シカゴの銀座通りであって、豪華なホテルや、高級品を賣る有名な店が、たくさん竝んでいる。シカゴには、もちろん高島屋や三越に相當するデパートも、立派なものがいくつかあるが、それ等は、この湖岸通りから一段内側の大通りにある。そういうデパートなら、われわれ日本人も、たまにははいることも出來るが、海岸通りの店へは、決して足踏みしてはならない。其處はとんでもないところなのである。

實は、知人の夫人で、裁縫が非常に巧くて、この高級服裝店へ勤めている人がある。先日話のついでに、娘たちが來たら、一枚くらいは、そういう店で作った餘所行きも必要でしょうかね、と聞いてみた。そしたら、とんでもない、一寸したスカート一枚でも、三百弗はとられますよということであった。スカート一枚十萬圓以上もしては、なるほどこれは別の世界の話である。

もっとも話をきいてみれば、それも當然なのであって、こういう店は、服裝店というよりも、むしろ娯樂場なのである。まずドアを開けてはいると、黒い服を着た男と、その助手の女とがとんで來て、一室に招じ入れる。この二人は、最後までつききりなのである。たいていは、顏見知りの番頭がつくのだそうであるが、この點は、昔の日本とよく似ている。

ところで、多くの場合、別に何が必要だというのではないので、まあこの頃の流行は、というような、話をしているうちに、マネキンが、御客樣の氣に入りそうな服を着て現われる。それがいろいろなポーズをしてくれるのを、見ているうちに、自分がそのマネキンのような姿の良い美人になったような錯覺に、次第に陷って行く。そこで隣りの料理店へいいつけて、高級葡萄酒と、つまみものとを持って來させ、その葡萄酒を、番頭にも、マネキンにも振舞いながら、次ぎ次ぎと新流行の服をマネキンに着せてみて、何時間でもねばるのだそうである。

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