TRENDIA CLASSIC

水爆の平和利用

中谷宇吉郎

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今度のジュネーヴ會議で、新しい問題が一つ提出された。それは水爆の原理が、原子力の平和利用に適用されるか否かという問題である。

現在世界中でやかましく論議されているのは、ウラニウム爆彈の原理を用いて、新しい動力源をつくろうというのである。アメリカにしても、ソ連にしても、また英國でも、現在唱えられ、且つ着手されているのは、全部ウラニウム原子の分裂に伴なうエネルギーを使うやり方である。日本でこの數ヵ月來新聞を賑わして來た原子力發電も、もちろんこの方法である。

ところが水爆の方は、水素原子二個を融合させてヘリウム原子をつくる時に、放出されるエネルギーを使う。ウラニウムの場合とは、いわば逆の作用を利用するのである。この方が千倍も大きいエネルギーを出すので、水爆の方が、恐るべき猛威をふるうわけである。

この水爆反應の方は、非常に扱いにくいので、今までのところは、それを平和目的に使う方法のめどがつかなかった。平和目的というのは、この莫大なエネルギーを瞬間的に出させないで、定常的に出させるという意味である。

もしそれが可能になれば、ウラニウム原子の分裂を利用する現在のいわゆる「原子力發電」は、ひどく舊式なものになってしまう。ウラニウムなどほとんど必要がなくなるかもしれないので、それこそ動力界に於ける大革命である。

この水爆の平和利用については、今までどこの國でも、一言も發表していない。そういう研究をやっているのかどうかも、皆目分からなかった。ところが、今度のジュネーヴ會議に際し、新聞記者會談があったが、その席上アメリカの原子力委員會會長シュトラウス氏が、初めてこの問題について發言をして、大いに注目をひいた。

それは質疑應答の形でなされたので、もちろん内容の詳細などには觸れていない。しかしアメリカの原子力委員會は、現在その主力をこの研究に向けていること、研究の規模は大體原爆製造計畫に似たものであること、研究は或る程度進歩していることが明らかにされた。もっとも不可能ということが分っても、それも進歩の一つとしての話である。

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