本文へ移動
TORENDIA

フィルター附煙草

本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

紙巻煙草の吸口に綿のフィルターを装着する流行を題材とし、その急激な普及と、アメリカで話題となった紙巻煙草と肺臓癌との統計的な相関関係について論じる。喫煙と癌の関連をめぐる諸説や、統計データの解釈の難しさ、そして企業側の対応について考察する。消費者の健康志向と市場の動向を背景に、科学的な知見の不確定さを浮き彫りにしながら、現代の生活環境と喫煙習慣がもたらす影響を冷静に綴る随筆である。

中谷宇吉郎

速度
🎧 フィルター附煙草 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

卷煙草の吸口のところに、綿のようなもの、即ちフィルターをつけて、煙を濾すことが流行っている。

そういうフィルター附の煙草は、數年前から賣り出されていたが、昨年歸る頃には、まだそう流行していなかった。稀れに吸っている人を見かける程度で、全體の數パーセントにもならなかったであろう。

ところが、今度來てみたら、僅か一年のうちに、たいへんな流行である。研究所の中でも、半數近くは、このフィルター附の煙草を吸っている。私も試みてみたが、口あたりが軟くて、何となくのどにいいような氣がするので、目下つづけてみている。

アメリカのように、消費度が高くて、極端な自由競爭をやっている國では、何か一つ當たると、一遍に大金持になる。煙草の方は、大會社でやっているのであるから、今紀文のようなことはなかろう。しかし會社としては、何か一つ人氣に投ずると、大いに儲かるわけである。

フィルター附の煙草が、何故急にこう普及するようになったかは、一寸分らない。やにを濾せば、のどにいいくらいは、初めから分っていたことである。

ところで、今日パーティーに招ばれて行ったら、同席の夫人が、やはりフィルター附の煙草を吸っている。そしてこの方が幾分は肺臟癌の豫防にいいだろうという話をしていた。

昨年歸る一寸前頃、アメリカで、紙卷煙草と肺臟癌との關係が、大問題になったことがある。紙卷煙草を一日二十本以上吸う人と、煙草を吸わない人とについて、それぞれ肺臟癌の率を統計的に調べてみると、喫煙者の方が、斷然多いという結果が出た。壽命の方も、喫煙者の方が數年短いという統計がはっきり出ていた。

ところがパイプを使っている人について調べてみると、この方は煙草を喫まない人と、ほとんど同じである。それで紙卷煙草の紙の方が惡いのだろうという風に、解釋されていた。

中谷宇吉郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本