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TORENDIA

あいびき

本文約9,000字 ・ 読了時間 約19分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の樺の林で獲物を狙い潜んでいた猟師は、思いを寄せる男を待つ農夫の娘アクーリナと遭遇する。都会への旅立ちを控える男は、娘の不安や涙を冷淡にあしらい、やがて一人で立ち去ってしまう。一人残された娘の姿を見届けた猟師は、季節が深まる秋の気配と、物悲しい記憶を胸に帰路につく。二人のすれ違う心と、秋の風が吹き抜ける林の中の光景を鮮明に描く。

イワン・ツルゲーネフ Ivan Turgenev

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このあいびきは先年仏蘭西で死去した、露国では有名な小説家、ツルゲーネフという人の端物の作です。今度徳富先生の御依頼で訳してみました。私の訳文は我ながら不思議とソノ何んだが、これでも原文はきわめておもしろいです。

秋九月中旬というころ、一日自分がさる樺の林の中に座していたことがあッた。今朝から小雨が降りそそぎ、その晴れ間にはおりおり生ま煖かな日かげも射して、まことに気まぐれな空ら合い。あわあわしい白ら雲が空ら一面に棚引くかと思うと、フトまたあちこち瞬く間雲切れがして、むりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧し気に見える人の眼のごとくに朗かに晴れた蒼空がのぞかれた。自分は座して、四顧して、そして耳を傾けていた。木の葉が頭上で幽かに戦いだが、その音を聞たばかりでも季節は知られた。それは春先する、おもしろそうな、笑うようなさざめきでもなく、夏のゆるやかなそよぎでもなく、永たらしい話し声でもなく、また末の秋のおどおどした、うそさぶそうなお饒舌りでもなかッたが、ただようやく聞取れるか聞取れぬほどのしめやかな私語の声であった。そよ吹く風は忍ぶように木末を伝ッた。照ると曇るとで、雨にじめつく林の中のようすが間断なく移り変ッた。あるいはそこにありとある物すべて一時に微笑したように、隈なくあかみわたッて、さのみ繁くもない樺のほそぼそとした幹は思いがけずも白絹めく、やさしい光沢を帯び、地上に散り布いた、細かな、落ち葉はにわかに日に映じてまばゆきまでに金色を放ち、頭をかきむしッたような「パアポロトニク」(蕨の類い)のみごとな茎、しかも熟えすぎた葡萄めく色を帯びたのが、際限もなくもつれつからみつして、目前に透かして見られた。

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