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TORENDIA

国語音韻の変遷

本文約31,300字 ・ 読了時間 約63分

あらすじ(AIが作成しました)

言語を形成する音韻組織や連音上の法則、時代や地域による音韻の相違と変遷を論じる。奈良朝以前から江戸時代以降に至る国語の音韻変化について、語頭音や語尾音の法則、複合語における連濁や転韻、母音の連続を避ける傾向、唇音退化、および外国語の影響を詳細に分析する。古代の音韻体系が複雑かつ多種多様であり、年月を経て次第に統一され単純化されてきた過程を考察し、国語の歴史的変遷の全体像を提示する。

橋本進吉

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一 音韻組織と連音上の法則

言語は、すべて一定の音に一定の意味が結合して成立つものであって、音が言語の外形をなし、意味がその内容を成しているのである。かような言語の外形を成す音は、どんなになっているかを考えて見るに、箇々の単語のような、意味を有する言語単位は、その音の形は種々様々であって、これによって、一つ一つ違った意味を有する種々の単語を区別して示しているのであるが、その音の姿を、それ自身として観察してみると、一定の音の単位から成立っているのであって、かような音の単位が、或る場合にはただ一つで、或る場合にはいくつか組合わされて、意味を有する箇々の言語単位の種々様々な外形を形づくっているのである。かような言語の外形を形づくる基本となる音の単位は、国語においては、例えば現代語の「あたま(頭)」はア・タ・マの三つ、「かぜ(風)」はカ・ゼの二つ、「すこし(少)」はス・コ・シの三つ、「ろ(櫓)」や「を(尾)」はそれぞれロ又はオの一つから成立っている。

かように、言語を形づくる基本たる一つ一つの音の単位は、単語のように無数にあるものではなく、或る一定の時代または時期における或る言語(例えば現代の東京語とか、平安朝盛時の京都語など)においては或る限られた数しかないのである。すなわち、その言語を用いる人々は、或る一定数の音単位を、それぞれ互いに違った音として言いわけ聞きわけるのであって、言語を口に発する時には、それらの中のどれかを発音するのであり、耳に響いて来た音を言語として聞く時には、それらのうちのどれかに相当するものとして聞くのである。もっとも、感動詞や擬声語の場合には、時として右の一定数以外の音を用いることがあるが、これは、特殊の場合の例外であって、普通の場合は、一定数の音単位以外は言語の音としては用いることなく、外国語を取入れる場合でも、自国語にないものは自国語にあるものに換えてしまうのが常である(英語の stick をステッキとしたなど)。

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