さるのこしかけ
本文約4,000字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
夕暮れの栗の木に三つの白いきのこを見つけた楢夫は、小猿の大将と名乗る者に出会う。小猿に導かれ、栗の木の中にある煙突のような場所を駆け上がった楢夫は、気づかぬうちに種山ヶ原という見知らぬ草原へと飛び出す。そこで小猿たちが繰り広げる激しい演習を見学するうち、小猿たちに体を縛られ、胴上げをされて空高く投げ上げられる。間一髪で山男に救われ、楢夫は無事に自宅の栗の木の下へと戻る。
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楢夫は夕方、裏の大きな栗の木の下に行きました。その幹の、丁度楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。
楢夫は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。
「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、すいぶん小さな猿だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ。」
そしたら、きのこの上に、ひょっこり三疋の小猿があらわれて腰掛けました。
やっぱり、まん中のは、大将の軍服で、小さいながら勲章も六つばかり提げています。両わきの小猿は、あまり小さいので、肩章がよくわかりませんでした。
小猿の大将は、手帳のようなものを出して、足を重ねてぶらぶらさせながら、楢夫に云いました。
「おまえが楢夫か。ふん。何歳になる。」
楢夫はばかばかしくなってしまいました。小さな小さな猿の癖に、軍服などを着て、手帳まで出して、人間をさも捕虜か何かのように扱うのです。楢夫が申しました。
「何だい。小猿。もっと語を丁寧にしないと僕は返事なんかしないぞ。」
小猿が顔をしかめて、どうも笑ったらしいのです。もう夕方になって、そんな小さな顔はよくわかりませんでした。
けれども小猿は、急いで手帳をしまって、今度は手を膝の上で組み合せながら云いました。
「仲々強情な子供だ。俺はもう六十になるんだぞ。そして陸軍大将だぞ。」
楢夫は怒ってしまいました。
「何だい。六十になっても、そんなにちいさいなら、もうさきの見込が無いやい。腰掛けのまま下へ落すぞ。」
小猿が又笑ったようでした。どうも、大変、これが気にかかりました。
けれども小猿は急にぶらぶらさせていた足をきちんとそろえておじぎをしました。そしていやに丁寧に云いました。