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TORENDIA

自分だけの世界

本文約6,300字 ・ 読了時間 約13分

あらすじ(AIが作成しました)

著者自身の覚え書きとして綴られた本作は、難解な書物『唯一者とその所有』を十年かけて翻訳し終えた心境と、それに至るまでの内省を描く。著者は、世間に対する違和感を抱いた少年時代から、宗教やナチュラリズム、白樺派など様々な精神的潮流に触れながら、人生の目的や自己のあり方を模索し続けた。マックス・シュティルナーとの出会いによって自らの哲学と指針を得た経験を通じ、個人の自覚と自由なあり方を論じる。

辻潤

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🎧 自分だけの世界 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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これは読者のためではなく寧ろ自分の覚え書きのつもりで書いて置くのである。だが読者にも何等かの参考にならないとも限らない。自分はこの書(自我経)を訳了した時にはなんとなく仕事らしい仕事を片付けたような気がした。他の人から見たらなんでもないことかも知れないが自分だけには意味がありそうに思われたのである。

自分は十年も前に読み始めた本をやっと今頃になって訳了したのである。翻訳の意志は元来此書を読み始めた時から萌してはいたがそれを何時始められるか、又何時終わるかはまるで見当がついていなかったし、よし訳したところで出版が果して可能であるか否かさえ勿論わからなかったのである。それにこの難解な書物を自分でよく訳了し得るかどうかということも頗る疑問であった。今、自分はそれでも「やっと片付けた」と考えると少しは嬉しいような気持にもなるのである。

自分はこれを完全な翻訳だなどと公言することは遠慮しよう。なぜなら重訳である上にかなり無理が伴っているからである。それは第一僕自身のカルチュアに原因してはいるが、自分の経済的不如意が、どうしても落ちついてこの仕事をさせるようにしないからである。これは甚だ無気力な弁明ではあるが、事実は如何とも仕方がない。自分は自分の力だけのことしきゃ出来ないのだから。しかしどうかしてこの書を一字一句余さずに精読(実際自分のような「手から口へ」の生活者には翻訳でもする以外にはそんな余裕は与えられはしない)したいという強い気持が自分に元々あったために、時々起る馬鹿々々しいという気持を幾度となく押え付けて、やっと漕ぎつけた次第なのである。

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