TRENDIA CLASSIC

俊寛

菊池寛

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治承二年九月二十三日のことである。

もし、それが都であったならば、秋が更けて、変りやすい晩秋の空に、北山時雨が、折々襲ってくる時であるが、薩摩潟の沖遥かな鬼界ヶ島では、まだ秋の初めででもあるように暖かだった。

三人の流人たちは、海を見下ろす砂丘の上で、日向ぼっこをしていた。ぽかぽかとした太陽の光に浴していると、ところどころ破れほころびている袷を着ていても、少しも寒くはなかった。

四、五日吹き続いた風の名残りが、まだ折々水沫を飛ばす波がしらに現れているものの、空はいっぱいに晴れ渡って、漣のような白雲が太陽をかすめてたなびいているだけだった。そうした晴れ渡った青空から、少しの慰めも受けないように、三人の流人たちは、疲れ切った獣のように、黙って砂の上に蹲っている。康頼は、さっきから左の手で手枕をして、横になっている。

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