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TORENDIA

若菜集

本文約17,400字 ・ 読了時間 約35分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の訪れや初恋の情景、身を焦がす恋の苦しみなど、移ろいゆく季節と人の心を繊細な詩歌で綴る。山里に響く秋風の音、林檎畑で芽生えた恋心、花鳥の姿に投影された情愛、失った友を偲ぶ悲哀などを描き、自然の美しさと人間の内面にある熱き情念を叙情的に謳い上げる。情愛の深さゆえの苦悩や別れの切なさを通じて、生の儚さと美しさを表現する詩集。

島崎藤村

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こゝろなきうたのしらべは

ひとふさのぶだうのごとし

なさけあるてにもつまれて

あたゝかきさけとなるらむ

ぶだうだなふかくかゝれる

むらさきのそれにあらねど

こゝろあるひとのなさけに

かげにおくふさのみつよつ

そはうたのわかきゆゑなり

あぢはひもいろもあさくて

おほかたはかみてすつべき

うたゝねのゆめのそらごと

一 秋の思

秋

秋は来ぬ

秋は来ぬ

一葉は花は露ありて

風の来て弾く琴の音に

青き葡萄は紫の

自然の酒とかはりけり

秋は来ぬ

秋は来ぬ

おくれさきだつ秋草も

みな夕霜のおきどころ

笑ひの酒を悲みの

盃にこそつぐべけれ

秋は来ぬ

秋は来ぬ

くさきも紅葉するものを

たれかは秋に酔はざらめ

智恵あり顔のさみしさに

君笛を吹けわれはうたはむ

初恋

まだあげ初めし前髪の

林檎のもとに見えしとき

前にさしたる花櫛の

花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて

林檎をわれにあたへしは

薄紅の秋の実に

人こひ初めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの

その髪の毛にかゝるとき

たのしき恋の盃を

君が情に酌みしかな

林檎畑の樹の下に

おのづからなる細道は

誰が踏みそめしかたみぞと

問ひたまふこそこひしけれ

狐のわざ

庭にかくるゝ小狐の

人なきときに夜いでて

秋の葡萄の樹の影に

しのびてぬすむつゆのふさ

恋は狐にあらねども

君は葡萄にあらねども

人しれずこそ忍びいで

君をぬすめる吾心

髪を洗へば

髪を洗へば紫の

小草のまへに色みえて

足をあぐれば花鳥の

われに随ふ風情あり

目にながむれば彩雲の

まきてはひらく絵巻物

手にとる酒は美酒の

若き愁をたゝふめり

耳をたつれば歌神の

きたりて玉の簫を吹き

口をひらけばうたびとの

一ふしわれはこひうたふ

あゝかくまでにあやしくも

熱きこゝろのわれなれど

われをし君のこひしたふ

その涙にはおよばじな

君がこゝろは

君がこゝろは蟋蟀の

風にさそはれ鳴くごとく

朝影清き花草に

惜しき涙をそゝぐらむ

それかきならす玉琴の

一つの糸のさはりさへ

君がこゝろにかぎりなき

しらべとこそはきこゆめれ

あゝなどかくは触れやすき

君が優しき心もて

かくばかりなる吾こひに

触れたまはぬぞ恨みなる

傘のうち

二人してさす一張の

傘に姿をつゝむとも

情の雨のふりしきり

かわく間もなきたもとかな

顔と顔とをうちよせて

あゆむとすればなつかしや

梅花の油黒髪の

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