TRENDIA CLASSIC
砂がき
竹久夢二
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十字架
”神は彼を罰して
一人の女性の手に
わたし給へり”
ああ、
わが負へる
白き十字架。
わが負へる柔き十字架。
人も見よ。
わが負へる美しき十字架。
心飢ゆ
ひもじいと言つては人間の恥でせうか。
垣根に添うた 小徑をゆきかへる私は
決して惡漢のたぐひではありません
よその厨からもれる味噌汁の匂が戀しいのです。
故郷
いい年をしてホームシツクでもありますまい。
だが、泥棒でさへどうかすると故郷を見にゆきます。
生れた故郷が戀しいからではありません
人生があまりに寂しいからです。
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つきくさ
おほかたのはなは
あさにひらけど
つきくさの
つゆをおくさへ
おもぶせに
よるひらくこそ
かなしけれ。
ひるはひるゆゑ
あでやかに
みちゆきびとも
ゑまひながめど
つきくさの
ほのかげに
あひよるものは
なくひとなるぞ
さびしけれ。
ある思ひ出
思ひ出を哀しきものにせしは誰ぞ
君がつれなき故ならず
たけのびそめし黒髮を
手には捲きつゝ言はざりし
戀の言葉のためならず
嫁ぎゆく日のかたみとて
忘れてゆきし春の夜の
このくすだまの簪を
哀しきものにしたばかり
夕餉時
夕方になつてひもじくなると
母親のことを思ひ出します。
母親はうまい夕餉を料つて
わたしを待つてくれました。
自畫自贊
ほんたうの心は互に見ぬやうに
言はせぬやうに眼をとぢて
いたはられつゝきはきたが
何か心が身にそはぬ。
昨日のまゝの娘なら
昨日のまゝですんだもの
何か心が身にそはぬ
男は女の貞操を疑つてゐるのである。ほんたうの事を知りたいけれど、聞くのを恐れてゐる。それでも何かのふしにとう/\言つて了つた。女はつと顏をあげて氷も燃えるやうな眼ざしをして、男を見つめた。やがて口の端に不自然な冷笑を浮べたかと思ふと「あなたは馬鹿ね!」と言つた。
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