本文へ移動
TORENDIA

かすかな声

本文約880字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

困難な状況下においても、他者や運命を信じ抜くことの重要性と、自己を深く見つめる姿勢を説く。信じる能力を持つことこそが勝利への道であるとし、不平を言わず、自身の内面を律して生活を続けることの尊さを語る。また、対話形式を取り入れながら、生活、敗北、芸術といった概念の本質を独自の視点で定義し、自己弁解を排して自信を抱き、ひたむきに生きることの意義を綴る。

太宰治

速度
🎧 かすかな声 / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

信じるより他は無いと思う。私は、馬鹿正直に信じる。ロマンチシズムに拠って、夢の力に拠って、難関を突破しようと気構えている時、よせ、よせ、帯がほどけているじゃないか等と人の悪い忠告は、言うもので無い。信頼して、ついて行くのが一等正しい。運命を共にするのだ。一家庭に於いても、また友と友との間に於いても、同じ事が言えると思う。

信じる能力の無い国民は、敗北すると思う。だまって信じて、だまって生活をすすめて行くのが一等正しい。人の事をとやかく言うよりは、自分のていたらくに就いて考えてみるがよい。私は、この機会に、なお深く自分を調べてみたいと思っている。絶好の機会だ。

信じて敗北する事に於いて、悔いは無い。むしろ永遠の勝利だ。それゆえ人に笑われても恥辱とは思わぬ。けれども、ああ、信じて成功したいものだ。この歓喜!

だまされる人よりも、だます人のほうが、数十倍くるしいさ。地獄に落ちるのだからね。

不平を言うな。だまって信じて、ついて行け。オアシスありと、人の言う。ロマンを信じ給え。「共栄」を支持せよ。信ずべき道、他に無し。

甘さを軽蔑する事くらい容易な業は無い。そうして人は、案外、甘さの中に生きている。他人の甘さを嘲笑しながら、自分の甘さを美徳のように考えたがる。

「生活とは何ですか。」

「わびしさを堪える事です。」

自己弁解は、敗北の前兆である。いや、すでに敗北の姿である。

「敗北とは何ですか。」

「悪に媚笑する事です。」

「悪とは何ですか。」

「無意識の殴打です。意識的の殴打は、悪ではありません。」

議論とは、往々にして妥協したい情熱である。

「自信とは何ですか。」

「将来の燭光を見た時の心の姿です。」

「現在の?」

「それは使いものになりません。ばかです。」

「あなたには自信がありますか。」

「あります。」

「芸術とは何ですか。」

「すみれの花です。」

「つまらない。」

「つまらないものです。」

「芸術家とは何ですか。」

「豚の鼻です。」

「それは、ひどい。」

「鼻は、すみれの匂いを知っています。」

「きょうは、少し調子づいているようですね。」

「そうです。芸術は、その時の調子で出来ます。」

完

太宰治の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本