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TORENDIA

僕の孤独癖について

本文約5,000字 ・ 読了時間 約10分

あらすじ(AIが作成しました)

先天的な気質や学生時代の陰鬱な体験、神経質な性格や強迫観念により、人嫌いで非社交的となった著者の孤独癖を綴る。多くの友人を失う苦しみを味わいつつも、成長や家庭環境の変化を経て、次第に孤独癖が癒え、他人との交流を楽しめるようになる過程を論じる。孤独が天才の悲劇であると同時に、人間にとって社交が習慣的な必要事であることも考察し、常識的な健康を回復した自身の現在の心境と希望を描いている。

萩原朔太郎

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🎧 僕の孤独癖について / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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僕は昔から「人嫌ひ」「交際嫌ひ」で通つて居た。しかしこれには色々な事情があつたのである。もちろんその事情の第一番は、僕の孤独癖や独居癖やにもとづいて居り、全く先天的気質の問題だが、他にそれを余儀なくさせるところの、環境的な事情も大いにあつたのである。元来かうした性癖の発芽は、子供の時の我がまま育ちにあるのだと思ふ。僕は比較的良家に生れ、子供の時に甘やかされて育つた為に、他人との社交について、自己を抑制することができないのである。その上僕の風変りな性格が、小学生時代から仲間の子供とちがつて居たので、学校では一人だけ除け物にされ、いつも周囲から冷たい敵意で憎まれて居た。学校時代のことを考へると、今でも寒々とした悪感が走るほどである。その頃の生徒や教師に対して、一人一人にみな復讐をしてやりたいほど、僕は皆から憎まれ、苛められ、仲間はづれにされ通して来た。小学校から中学校へかけ、学生時代の僕の過去は、今から考へてみて、僕の生涯の中での最も呪はしく陰鬱な時代であり、まさしく悪夢の追憶だつた。

かうした環境の事情からして、僕は益人嫌ひになり、非社交的な人物になつてしまつた。学校に居る時は、教室の一番隅に小さく隠れ、休業時間の時には、だれも見えない運動場の隅に、息を殺して隠れて居た。でも餓鬼大将の悪戯小僧は、必ず僕を見付け出して、皆と一緒に苛めるのだつた。僕は早くから犯罪人の心理を知つてゐた。人目を忍び、露見を恐れ、絶えずびくびくとして逃げ廻つてゐる犯罪者の心理は、早く既に、子供の時の僕が経験して居た。その上僕は神経質であつた。恐怖観念が非常に強く、何でもないことがひどく怖かつた。幼年時代には、壁に映る時計や箒の影を見てさへ引きつけるほどに恐ろしかつた。家人はそれを面白がり、僕によく悪戯をしてからかつた。或る時、女中が杓文字の影を壁に映した。僕はそれを見て卒倒し、二日間も発熱して臥てしまつた。幼年時代はすべての世界が恐ろしく、魑魅妖怪に満たされて居た。

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