TRENDIA CLASSIC

立秋

萩原朔太郎

1 / 1

遠く行く君が手に、

胡弓の箱はおもからむ。

きのふ山より摘みてかへれば、

紫苑はなしぼみて、

すでに秋の愁ひをさそふ。

友よ、

やさしく胡弓を摩り、

遠くよりしも光を送れ。

ああ、わが故郷にあるの日、

終日怒りうゑを感じ、

手を高く蒼天のうへに伸ぶ。

―一九一四、八、十四―

萩原朔太郎の他の作品