樹木とその葉
本文約860字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
如月の梅の開花とともに訪れる季節特有の憂鬱と、それに伴う内省的な心境を綴る。厳寒のなかで枯れ木に咲く梅の白さに惹かれつつ、やがて来る春の象徴である桜への想いを語る。静かな庭で愛でる桜の風情から、山深くへ分け入り出会う山桜の輝きに至るまで、花と葉の織りなす繊細な美しさと、春の光に包まれて移ろう心情を短歌を交えて描き出す。
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きさらぎは梅咲くころは年ごとにわれのこころのさびしかる月
梅の花が白くつめたく一輪二輪と枯れた樣な枝のさきに見えそむる。吹きこめた北の風西の風がかすかな東風にかはらうとする。その頃になるときまつて私は故のない憂欝に心を浸されてしまふ。
眼をあけてゐるのもいやだが、而かも心の底は明るく冷やけく澄んで居る。爲事のいやになるのもこの頃である。煙草のいゝのを喫ひたくなるのもこの頃である。
あたりの木々も、常磐樹ならば金屬の樣に黒く輝き、落葉樹ならばたゞ明るく靜けく枯れた樣に立つてゐる。根がたの草はみなひとしく枯れ伏してうすら甘いその頃の日ざしを含んでゐる。さうしたなかに一りん二りんと咲き出づる梅の初花を私は愛する。
年ごとにする驚きよさびしさよ梅の初花を今日見出でたり
梅咲けばわがきその日もけふの日もなべてさびしく見えわたるかな
梅の花はつはつ咲けるきさらぎはものぞおちゐぬわれのこころに
然し何と云つても春は櫻である。それもお花見場所の埃つぽいのは花のおもひがせぬ。靜かな庭に咲き出でた一本二本、雨の後などとりわけて鮮けく、照り澄んだ日ざしのなかにほくらほくらと散り澄んで輝いてゐるのもいゝ。
夕霽暮れおそきけふの春の日の空のしめりに櫻咲きたり
雨過ぎししめりのなかにわが庭の櫻しばらく散らであるかな
ひややけき風をよろしみ窓あけて見てをれば櫻しじに散りまふ
春の日のひかりのなかにつぎつぎに散りまふ櫻かがやけるかな
さういふうちにも私はほんたうの山櫻、單瓣の、雪の樣に白くも見え、なかにかすかな紅ゐを含んだとも見ゆる、葉は花よりも先に萌え出でて單紅色の滴るごとくに輝いてゐる、あの山櫻である。これは都會や庭園などには見かけない、どうしても山深くわけ入らねばならぬ。
うす紅に葉はいちはやく萌え出でて咲かむとすなり山ざくら花
花も葉も光りしめらひわれのうへに笑み傾ける山ざくら花
かき坐る道ばたの芝は枯れたれやすわりてあふぐ山ざくら花
うらうらと照れるひかりにけぶりあひて咲きしづもれる山ざくら花
刈りならす枯萱山の山はらに咲きかがよへる山ざくら花
完