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TORENDIA

樹木とその葉

本文約890字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

山頂の静かな湖畔や火山、あるいは海辺の岬といった多様な情景の中での暮らしを夢想し、自由で心豊かな生活への希求を綴る。樹木や草花、鳥の鳴き声といった自然の姿を見つめ、火山を巡る旅や日本中の港を歩く放浪への憧憬を重ねる。日々のささやかな願いや家族への愛着、書斎での思索など、自身の内面と向き合いながら、移ろいゆく季節や風景とともに歩む穏やかな生への願いを、詩的で率直な言葉で描き出す一冊である。

若山牧水

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🎧 樹木とその葉 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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噴火口のあとともいふべき、山のいただきの、さまで大きからぬ湖。

あたり圍む鬱蒼たる森。

森と湖との間ほぼ一町あまり、ゆるやかなる傾斜となり、青篠密生す。

青篠の盡くるところ、幅三四間、白くこまかき砂地となり、渚に及ぶ。

その砂地に一人寢の天幕を立てて暫く暮し度い。

ペンとノートと、

愛好する書籍。

堅牢なる釣洋燈、

精良な飮料、食料。

石楠木咲き、

郭公、啼く。

誰一人知人に會はないで

ふところの心配なしに、

東京中の街から街を歩き、

うまいといふものを飮み、且つ食つてり度い。

遠く望む噴火山のいただきのかすかな煙のやうに、

腹這つて覗く噴火口の底のうなりの樣に、

そして、千年も萬年も呼吸を續ける歌が詠み度い。

遠く、遠く突き出た岬のはな、

右も、左も、まん前もすべて浪、浪、

僅かに自分のしりへに陸が續く。

そんなところに、いつまでも、立つてゐたい。

いつでも立ち上つて手を洗へるやう、

手近なところに清水を引いた、

書齋が造り度い。

咲き、散り、

咲き、散る

とりどりの花のすがたを、

まばたきもせずに見てゐたい。

萌えては枯れ、

枯れては落つる、

落葉樹の葉のすがたをも、

また。

山と山とが相迫り、

迫り迫つて

其處にかすかな水が生れる。

岩には苔、

苔には花、

花から花の下を、

傳ひ、滴り、

やがては相寄つて

岩のはなから落つる

一すぢの絲のやうな

まつしろな瀧を、

ひねもす見て暮し度い。

いつでも、

ほほゑみを、

眼に、

こころに、

やどしてゐたい。

自分のうしろ姿が、

いつでも見えてるやうに

生き度い。

窓といふ

窓をあけ放つても、

蚊や

蟲の

入つて來ない、

夏はないかなア。

日本國中の

港といふ港に、

泊まつて歩き度い。

死火山、

活火山、

火山から

火山の、

裾野から、

裾野を

天幕を擔いで、

寢て歩きたい。

日本國中にある

樹のすがたと、

その名を、

知りたい。

おもふ時に、

おもふものが、

飮みたい。

欲しい時に、

燐寸よ、

あつて呉れ。

煙草の味が、

いつでも

うまくて呉れ。

或る時に

可愛いいやうに、

妻と

子が、

可愛いいと

いい。

おもふ時に

降り

おもふ時に

晴れて呉れ。

眼が覺めたら

枕もとに、

かならず

新聞が

來てるといい。

庭の畑の

野菜に、

どうか、

蟲よ、

附かんで呉れ。

麥酒が

いつも、

冷えてると、

いい。

完

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