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TORENDIA

踊る線条

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

フィッシンガーが制作した音楽映画「踊る線条」は、楽曲に合わせて光の斑点や線条が運動する作品である。著者はこの映画を試写で鑑賞し、楽曲の構造が幾何学的な光の動きとして表現される様子や、その純粋な運動の面白さを綴る。本作を舞踊の要素を解きほぐした形態と捉え、舞踊家や音楽家へ新たな表現の可能性を示唆する考察を収める。

寺田寅彦

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🎧 踊る線条 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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フィッシンガー作「踊る線条」と題するよほど変わった映画の試写をするからぜひ見に来ないかとI氏から勧められるままに多少の好奇心に促されて見に行った。プログラムを見ると、第五番「アメリカのフォクストロット」。第八番、デューカーの「魔術師の徒弟」。第九番、ブラームス「ウンガリシェ・タンツ」というふうに楽曲の名前が並べてあるだけで、いったいどんなものを見せられるか全く見当がつかない。

さて、映写が始まって音楽が始まると同時に、暗いスクリーンの上にいろいろの形をした光の斑点や線条が順次に現われて、それがいろいろ入り乱れた運動をするのであるが、全く初めての経験であるからただ一度見ただけでは到底はっきりした記憶などは残りようがない。しかし都合六編だけ通覧したあとでの印象は、実に思いのほかにおもしろいものであったということである。

たぶんは退屈で、しいて理屈をつけて見ているうちに頭が痛くなるようなものではないかと思っていた予想に反して、ただぼんやり見ているだけでなんとなく気持ちのいい、ともかくも充分楽しめるものであるということを発見して少々驚いたのであった。残念ながら大部分は肝心の楽曲をよく知らないから困るのであるが、ただ一つモツァルトの「ニ長調メヌエット」だけは曲の構造をよく知っている上に、光像の踊りも簡単であるから、比較的らくに光像の進行を追跡することができたようである。第一のテーマは楽譜の形からも暗示されるように、彗星のような光斑がかわるがわるコンマのような軌跡を描いては消える。トリラーの箇所は数条の波線が平行して流れる。

第二のテーマでは鉛直な直線の断片が自身に並行にS字形の軌跡を描いて動く。トリオの部分は概して水平な短い直線の断片が現われてそれがちょうど編隊飛行の飛行機が風に吹き散らされてでもいるような運動をする。これを見ながら同時にこの曲を聞いているといくらかこの映画作者の気持ちを理解することができるような気がする。

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