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TORENDIA

熱き茶色

本文約710字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

徳田球一の精悍な眼差しやダイナミックな振る舞い、そしてその人物像を特徴づける温かさや熱気を描く。また、演説の中で触れられた日本婦人が置かれている愛情や生活の窮状に関する独自の人間的感覚を論じる。過酷な体験を経てなお衰えぬ活力やユーモアを備えた人物の肖像を、観察を通じて綴る。

宮本百合子

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もし私が肖像画家であったら、徳田球一氏を描くときどの点に一番苦心するだろうかと思う。例えば、徳田さんの眼は、独特である。南方風な瞼のきれ工合に特徴があるばかりでなく、その眼の動き、眼光が、ひとくちに云えば極めて精悍であるが、この人の男らしいユーモアが何かの折、その眼の中に愛嬌となって閃めくとき、内奥にある温かさの全幅が実に真率に表現される。それに、熱中して物を云うとき、体じゅうに押し出されて来る一種類の少いダイナミックな空気を画家だったら、どんな工合に捉えて再現するのだろう。

徳田さんのもっている色調はきついチョコレートがかった茶色であり、それに漆がかっているような艷がある。風化作用に対して、いかにも抵抗力のきつい感じである。若さは、この人物のうちにあって、瑞々しいというようなものではなく、もっと熱気がつよく、動力蒸気の噴出めいている。

話しの合間合間に交えられる手振も徳田さん独特だし、その手の指には網走の厳しい幾冬かが印した凍傷の痕があるのである。大いに笑う彼の顔を見て、一緒に大笑いしずにいることは困難であろう。

或る演説の中で、徳田さんは、日本婦人の一般は、本人たちが自覚している以上のおどろくべき運命に陥っていると語った。そして日本の婦人は誰もが自由にかつえているばかりでなく、愛情にも飢えていると断言した。

私は、こうした着眼点を知って、徳田さんの人間的感覚に改めて注目した。徳田さんの意味する愛情は、女対男の限られた範囲のものではなく、女の生活全面に配られるべき人間らしい思いやり、方策、現実的な援助としての愛情を、日本の婦人は実に貧寒にしか享けていないという意味なのであった。

〔一九四六年一月〕

完

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