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TORENDIA

雲は天才である

本文約31,700字 ・ 読了時間 約64分

あらすじ(AIが作成しました)

S村の尋常高等小学校で代用教員として働く主人公は、校長の命により課外授業を休まざるを得なくなり、退屈な事務作業に追われる。そのような折、かつての知人である天野朱雲から、石本俊吉という人物への紹介状が届く。主人公を訪ねた石本は、朱雲との別離の情景や、二人の間に流れる激しい友情と悲壮な覚悟について語り出す。教員生活の閉塞感の中で、かつての友の消息を通じて若き魂の情熱と苦悩が鮮明に浮かび上がる様子を描く。

石川啄木

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一

六月三十日、S――村尋常高等小學校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常の如く極めて活氣のない懶うげな悲鳴をあげて、――恐らく此時計までが學校教師の單調なる生活に感化されたのであらう、――午後の第三時を報じた。大方今は既四時近いのであらうか。といふのは、田舍の小學校にはよく有勝な奴で、自分が此學校に勤める樣になつて既に三ヶ月にもなるが、未だ嘗て此時計がK停車場の大時計と正確に合つて居た例がない、といふ事である。少なくとも三十分、或時の如きは一時間と二十三分も遲れて居ましたと、土曜日毎に該停車場から程遠くもあらぬ郷里へ歸省する女教師が云つた。これは、校長閣下自身の辯明によると、何分此校の生徒の大多數が農家の子弟であるので、時間の正確を守らうとすれば、勢い始業時間迄に生徒の集りかねる恐れがあるから、といふ事であるが、實際は、勤勉なる此邊の農家の朝飯は普通の家庭に比して餘程早い。然し同僚の誰一人、敢て此時計の怠慢に對して、職務柄にも似合はず何等匡正の手段を講ずるものはなかつた。誰しも朝の出勤時間の、遲くなるなら格別、一分たりとも早くなるのを喜ぶ人は無いと見える。自分は? 自分と雖ども實は、幾年來の習慣で朝寢が第二の天性となって居るので……

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