TORENDIA
閑天地
石川啄木
TORENDIA
閑天地
本文約24,200字 ・ 読了時間 約49分
あらすじ(AIが作成しました)
都会の生活に倦み疲れた啄木が、故郷を想い、心身の安らぎを求めて仙台へ旅立つ様子を綴る。広瀬川の畔をさまよい、風光明媚な地で知己と語らい、詩歌を創作しながら過ごす百日間の閑居を記す。また、当時の文壇の風潮や自らの詩論、そして集まった仲間たちと月夜に歌を詠み合う十一夜会の情景などを通じ、流浪の詩人としての心象風景と、穏やかな日常の中にある文学的な愉悦を描く漫録である。
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(一) (「閑天地」は実に閑天地なり。野の※雲[#「轍」の「車」に代えて「木」、U+3BD9、55-上-3]に舞ひ、黄牛の草に眠るが如し。又春光野に流れて鳥初めて歌ひ、暮風清蔭に湧いて蜩の声を作すが如し。未だ許さず、生きんが為めにのみ生き、行かんがためにのみ行くが如き人の、この悠々の世界に入るを。啄木、永く都塵に埋もれて、旦暮身世の怱忙に追はれ、意ならずして故郷の風色にそむくうちに、身は塵臭に染み、吟心また労をおぼえぬ。乃ち茲に暫らく閑天地を求めて、心頭に雲を放ち、胸底に清風を蔵し、高眠安臥、興を暮天の鐘にさぐり、思を緑蔭の流光に托し、風鈴に和して吟じ、雨声を友として語り、この夏中百日を暢心静居の界に遊ばんとす。我がなつかしき故山の読者よ、卿等若し胸に一点の閑境地ありて、忙中なほ且つ花を花と見、鳥を鳥と聴くの心あらば、来つてこの埒もなき閑天地に我みちのくの流人と語るの風流をいなむ勿れ。記してこの漫録百題のはしがきとす。)
(二) 落人ごゝろ
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