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TORENDIA

雪の夜

本文約14,900字 ・ 読了時間 約30分

あらすじ(AIが作成しました)

銀行員の龍介は、帰宅して読書をするつもりだったが、あやふやな心情から帰路につけず、夜の街を彷徨う。同僚の誘いを避け、友人や知人を訪ねようとするが果たせず、かつての恋人・恵子の記憶や、周囲の無自覚な生活への嫌悪、そして自身の生活への矛盾した苦悩に苛まれる。街をさまよい、ある女と過ごした後に立ち去るが、やがて酔った労働者と衝突し、雪の中に倒れ込むまでを描く。出口の見えない焦燥と孤独に覆われた精神の風景を綴る物語。

小林多喜二

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一

仕事をしながら、龍介は、今日はどうするかと、思った。もう少しで八時だった。仕事が長びいて半端な時間になると、龍介はいつでもこの事で迷った。

地下室に下りていって、外套箱を開けオーバーを出して着ながら、すぐに八時二十分の汽車で郊外の家へ帰ろうと思った。停車場は銀行から二町もなかった。自家も停車場の近所だったから、すぐ彼はうちへ帰れて読みかけの本が読めるのだった。その本は少し根気の要るむずかしいものだったが、龍介はその事について今興味があった。彼には、彼の癖として何かのつまずきで、よくそれっきり読めずに、放ってしまう本がたくさんあった。

龍介はとにかく今日は真直に帰ろうと思った。

宿直の人に挨拶をして、外へ出た。北海道にめずらしいベタベタした「暖気雪」が降っていた。出口にちょっと立ち止まって、手袋をはきながら、龍介は自分が火の気のない二階で「つくねん」と本を読むことをフト思った。彼はまるで、一つの端から他の端へ一直線に線を引くように、自家へ帰ることがばかばかしくなった。彼は歩きだしながら、どうするかと迷った。停車場へ来るとプラットフォームにはもう人が出ていた。

龍介はポケットに手をつっこんだままちょっと立ち止まった。その時汽笛が聞えた。それで彼はホッとした気持を感じた。彼は線路を越して歩きだした。後で踏切りの柵の降りる音がして、地響が聞えてきた。

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