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TORENDIA

イギリス海岸

本文約10,500字 ・ 読了時間 約21分

あらすじ(AIが作成しました)

夏休みの農場実習の合間、北上川西岸にある青白い凝灰質の泥岩層を仲間内でイギリス海岸と名付け、頻繁に訪れる。かつては広大な鹹湖だった場所で、炭化した植物の根や化石が出土するこの地は、日常の農作業を離れた探究と遊びの場となる。ある日、川で兵隊の演習を眺め、また別の日には岩から奇妙な足あとを発見して採集に励む。百万年前の地質時代に思いを馳せつつ、生徒や教師と共に自然の中で過ごす夏のひとときを綴る。

宮沢賢治

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夏休みの十五日の農場実習の間に、私どもがイギリス海岸とあだ名をつけて、二日か三日ごと、仕事が一きりつくたびに、よく遊びに行った処がありました。

それは本とうは海岸ではなくて、いかにも海岸の風をした川の岸です。北上川の西岸でした。東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截って来る冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。

イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずいぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはずれに居る人は、小指の先よりもっと小さく見えました。

殊にその泥岩層は、川の水の増すたんび、奇麗に洗われるものですから、何とも云えず青白くさっぱりしていました。

所々には、水増しの時できた小さな壺穴の痕や、またそれがいくつも続いた浅い溝、それから亜炭のかけらだの、枯れた蘆きれだのが、一列にならんでいて、前の水増しの時にどこまで水が上ったかもわかるのでした。

日が強く照るときは岩は乾いてまっ白に見え、たて横に走ったひび割れもあり、大きな帽子を冠ってその上をうつむいて歩くなら、影法師は黒く落ちましたし、全くもうイギリスあたりの白堊の海岸を歩いているような気がするのでした。

町の小学校でも石の巻の近くの海岸に十五日も生徒を連れて行きましたし、隣りの女学校でも臨海学校をはじめていました。

けれども私たちの学校ではそれはできなかったのです。ですから、生れるから北上の河谷の上流の方にばかり居た私たちにとっては、どうしてもその白い泥岩層をイギリス海岸と呼びたかったのです。

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