高尾紀行
本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
十二月の小春日和、二人の旅人が本郷から新宿を経て高尾山へと向かう。道中、俳道修行の志を胸に、汽車や徒歩で八王子の風景や飯縄権現の社を巡り、冬の情景を俳句に詠む。帰路には高幡の不動や国分寺へ足を運び、各地で出会う素朴な人々の暮らしや冬枯れの自然を情緒豊かに綴る。道中の風物詩を詩情と共に描く、旅先での見聞と俳句を収める紀行文。
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旅は二日道連は二人旅行道具は足二本ときめて十二月七日朝例の翁を本郷に訪ふて小春のうかれありきを促せば風邪の鼻すゝりながら俳道修行に出でん事本望なりとて共に新宿さしてぞ急ぎける。
きぬ/″\に馬叱りたる寒さかな 鳴雪 暫くは汽車に膝栗毛を休め小春日のさしこむ窓に顏さしつけて富士の姿を眺めつゝ
荻窪や野は枯れはてゝ牛の聲 鳴雪 堀割の土崩れけり枯薄 同 雪の脚寶永山へかゝりけり
汽車道の一筋長し冬木立
麥蒔やたばねあげたる桑の枝
八王子に下りて二足三足歩めば大道に群衆を集めて聲朗かに呼び立つる獨樂まはしは昔の仙人の面影ゆかしく負ふた子を枯草の上におろして無慈悲に叱りたるわんぱくものは未來の豐太閤にもやあるらん。田舍といへば物事何となくさびて風流の材料も多かるに
店先に熊つるしたる寒さかな 鳴雪 干蕪にならんでつりし草鞋かな 同 冬川や蛇籠の上の枯尾花 同 木枯や夜著きて町を通る人
兀げそめて稍寒げなり冬紅葉
冬川の涸れて蛇籠の寒さかな
茶店に憩ふ。婆樣の顏古茶碗の澁茶店前の枯尾花共に老いたり。榾焚きそへてさし出す火桶も亦恐らくは百年以上のものならん。
穗薄に撫でへらされし火桶かな
高尾山を攀ぢ行けば都人に珍らしき山路の物凄き景色身にしみて面白く下闇にきらつく紅葉萎みて散りかゝりたるが中にまだ半ば青きもたのもし。
木の間より見下す八王子の人家甍を竝べて鱗の如し。
目の下の小春日和や八王子 鳴雪 飯繩權現に詣づ。
ぬかづいて飯繩の宮の寒きかな 鳴雪 屋の棟に鳩ならび居る小春かな
御格子に切髮かくる寒さかな
木の葉やく寺の後ろや普請小屋
山の頂に上ればうしろは甲州の峻嶺峨々として聳え前は八百里の平原眼の力の屆かぬ迄廣がりたり。
凩をぬけ出て山の小春かな
山を下りて夜道八王子に著く。
八日朝霜にさえゆく馬の鈴に眼を覺まし花やかなる馬士唄の拍子面白く送られながら八王子の巷を立ち出で日野驛より横に百草の松蓮寺を指して行くに、
朝霜や藁家ばかりの村一つ
冬枯やいづこ茂草の松蓮寺 鳴雪 路に高幡の不動を過ぐ。
松杉や枯野の中の不動堂