辞書
本文約5,800字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
日本の辞書の発展過程を辿り、漢字文化の影響下で和訓や古語を保存しようとする試みの歴史を論じる。古来、言語を記録し習得する努力は信仰や文学と密接に関わり、歌ことばの知識や文学語の蓄積を求めて編纂されてきた。本書は『倭名類聚鈔』をはじめとする過去の辞書の性格を分析し、現代における歴史的排列や語源への考察、方言の扱い方など、真の語彙集を目指す上での課題と辞書編纂の本質的なあり方を考究するものである。
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日本の辞書のできてくる道筋について考えてみる。
そういうとき、すぐにわれわれは『倭名類聚鈔』を頭に浮かべる。それより前には辞書がなかったかというと、以前のものが残っていないというだけのことで、源ノ順が突如として辞書をこしらえたというのではない。『倭名鈔』があれだけ正確な分類をしていることからみても、それが忽然と出てくるわけはない。それまでに、辞書を作る修練を日本の学界は積んでいたのである。漢字を集めた辞書のほかに、日本語を集めたものができていたと思われる。日本語を記録することがもっと早くからあったのだ。『倭名鈔』をみても、漢字の名詞、熟字を示して、それに和訓を付けている。ときによると、訓をつけることができなくて、訓を付けてなかったり、または、無理に付けたりしている。たとえば『倭名類聚鈔』には、「髭」「鬚」をそれぞれ「上つ髭」「下つ鬚」などと訓んでいるが、こんなことはいわない。日本語としては嘘の話だが、漢字を伝えるためには、このように語を新たに作らなくてはならぬことになる。
ともかく、漢字を出して、それにあたる訓を考えている。これをもう少し歴史的に、一つの過程として考えると、言語を覚えるという、日本人が昔からもっている努力のあらわれということはいえる。
歌ことば