TRENDIA CLASSIC

辞書

折口信夫

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日本の辞書のできてくる道筋について考えてみる。

そういうとき、すぐにわれわれは『倭名類聚鈔』を頭に浮かべる。それより前には辞書がなかったかというと、以前のものが残っていないというだけのことで、源ノ順が突如として辞書をこしらえたというのではない。『倭名鈔』があれだけ正確な分類をしていることからみても、それが忽然と出てくるわけはない。それまでに、辞書を作る修練を日本の学界は積んでいたのである。漢字を集めた辞書のほかに、日本語を集めたものができていたと思われる。日本語を記録することがもっと早くからあったのだ。『倭名鈔』をみても、漢字の名詞、熟字を示して、それに和訓を付けている。ときによると、訓をつけることができなくて、訓を付けてなかったり、または、無理に付けたりしている。たとえば『倭名類聚鈔』には、「髭」「鬚」をそれぞれ「上つ髭」「下つ鬚」などと訓んでいるが、こんなことはいわない。日本語としては嘘の話だが、漢字を伝えるためには、このように語を新たに作らなくてはならぬことになる。

ともかく、漢字を出して、それにあたる訓を考えている。これをもう少し歴史的に、一つの過程として考えると、言語を覚えるという、日本人が昔からもっている努力のあらわれということはいえる。

歌ことば

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