TRENDIA CLASSIC

嫉みの話

折口信夫

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憎しみは人間の根本的な感情とされているが、時代の推移とともに変わってきている。

次に、嫉妬について少し考えてみる。嫉妬も人間の根本的な感情で、わずかな時間では変わりもせぬし、地方や民族の間で変わりはせぬはずであるが、実は、日本人だけでは、すくなくとも変わってきているのである。これまでは、あまり心意現象にばかり拘泥していたから、習慣のほうへもっていって話そうと思う。

われわれが、嫉妬というものが男の間にもあると考えたのはごく近代のことで、女だけがもっているものと長く考えてきている。それが男にも延長されて、誰も不思議に思うておらぬ。しかしこれは、「へんねし」などの方言で表わされる。いこじな、片意地な、意地の悪い感情で、そこへ羨む心持がはいる。これは羨望、意地悪、頑固などの心持をもっている。へんねし、へんねちと表わされ、ねたみという語では表現されていなかったであろう。語は型だから、語によってその一つの内容へわれわれははいってゆくので、それを男のうえにも感じるのである。語というものの支配権は、たいしたものである。女のねたみについては、この間、柳田先生の話を引いたように、われわれ男女の間へ、他物を介在させまいとする感情である、ということは動くまい、と言うておいた。

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