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TORENDIA

わかれ

本文約11,900字 ・ 読了時間 約24分

あらすじ(AIが作成しました)

丘の上の別荘に独り住む青年田宮峰二郎は、親の反対で離れ離れとなった恋人松本治子への想いと、自身の天職とする文学や芸術への志との間で苦悩する。洋行を控え、この地での生活に別れを告げる中で、青年は孤独な生活の慰めとなった周囲の人々や風景を回想する。やがて彼は、死別や別離を超越した愛の永続性を確信し、運命を切り開く決意を固め、治子への想いを糧に新たな旅立ちへと心を向けていく。

国木田独歩

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わが青年の名を田宮峰二郎と呼び、かれが住む茅屋は丘の半腹にたちて美わしき庭これを囲み細き流れの北の方より走り来て庭を貫きたり。流れの岸には紅楓の類を植えそのほかの庭樹には松、桜、梅など多かり、栗樹などの雑わるは地柄なるべし、――区何町の豪商が別荘なりといえど家も古び庭もやや荒れて修繕わんともせず、主人らしき人の車その門に駐りしを見たる人まれなり、売り物なるべしとのうわさ一時は近所の人の間に高かりしもいつかこのうわさも消えて跡なく、ただ一年半ば以前よりこの年若き田宮の来たり住みつ。

年は二十を越ゆるようやく三つ四つ、背高く肉やせたり、顔だち凜々しく人柄も順良に見ゆれどいつも物案じ顔に道ゆくを、出であうこの地の人々は病める人ぞと判じいたり。さればまた別荘に独り住むもその故ぞと深くは怪しまざりき。終日家にのみ閉じこもることはまれにて朝に一度または午後に一度、時には夜に入りても四辺の野路を当てもなげに歩み、林の中に分け入りなどするがこの人の慣らいなれば人々は運動のためぞと、しかるべきことのようにうわさせり。

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