ラプンツェル
本文約3,800字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
庭の菜を欲した妻のため、夫が魔女との約束で生まれた娘を差し出す。娘はラプンツェルと名付けられ、魔女によって出口のない塔に閉じ込められる。長く美しい髪を梯子代わりに魔女と行き来する生活を送っていたが、森で歌声を耳にした王子が塔へ登るようになり、二人は密かに愛を育む。これを知った魔女はラプンツェルの髪を切り、砂漠へ追放する。塔で罠に遭い目を傷めた王子は、数年かけて砂漠で娘と再会を果たし、その涙で視力を取り戻す。
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むかしむかし夫婦者があって、永い間、小児が欲しい、欲しい、といい暮しておりましたが、やっとおかみさんの望みがかなって、神様が願いをきいてくださいました。この夫婦の家の後方には、小さな窓があって、その直ぐ向うに、美しい花や野菜を一面に作った、きれいな庭がみえるが、庭の周囲には高い塀が建廻されているばかりでなく、その持主は、恐ろしい力があって、世間から怖がられている一人の魔女でしたから、誰一人、中へはいろうという者はありませんでした。
或る日のこと、おかみさんがこの窓の所へ立って、庭を眺めて居ると、ふと美しいラプンツェル((菜の一種、我邦の萵苣(チシャ)に当る。))の生え揃った苗床が眼につきました。おかみさんはあんな青々した、新しい菜を食べたら、どんなに旨いだろうと思うと、もうそれが食べたくって、食べたくって、たまらない程になりました。それからは、毎日毎日、菜の事ばかり考えていたが、いくら欲しがっても、迚も食べられないと思うと、それが元で、病気になって、日増に痩せて、青くなって行きます。これを見て、夫はびっくりして、尋ねました。
「お前は、まア、何うしたんだえ?」
「ああ!」とおかみさんが答えた。「家の後方の庭にラプンツェルが作ってあるのよ、あれを食べないと、あたし死んじまうわ!」
男はおかみさんを可愛がって居たので、心の中で、
「妻を死なせるくらいなら、まア、どうなってもいいや、その菜を取って来てやろうよ。」
と思い、夜にまぎれて、塀を乗り越えて、魔法つかいの庭へ入り、大急ぎで、菜を一つかみ抜いて来て、おかみさんに渡すと、おかみさんはそれでサラダをこしらえて、旨そうに食べました。けれどもそのサラダの味が、どうしても忘れられない程、旨かったので、翌日になると、前よりも余計に食べたくなって、それを食べなくては、寝られないくらいでしたから、男は、もう一度、取りに行かなくてはならない事になりました。