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TORENDIA

返事

本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

縁あって一度も面識のない作家同士が長い手紙を交わす。かつての戦争で日本に味方した心情を率直に吐露し、敗戦後の日本を深く愛する心境を綴る。戦時中の嘘を並べたジャーナリズムが戦後も同様の無恥な姿勢を保つ現状を批判し、教養の重要性を説く。無頼派を自称する筆者が、自身の宿命を抱えながら、他者を愛することをモットーに、束縛を嫌い己の流儀を貫こうとする決意を表明する。

太宰治

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🎧 返事 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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拝復。長いお手紙をいただきました。

縁というのは、妙なものですね。(なんて、こんな事を言うと、非科学的だといって叱られるかしら。うるさい時代が過ぎて、二三日、ほっとしたと思ったら、また、うるさい時代がやって来ました。縁などというのは迷信である。必然的と言わなければならぬ、なんて、一言一言とがめられる、あの右翼のやっかい以前の左翼のやっかい時代が、また来るのかしら。あれももう私は、ごめんです)あなたも作家、私も作家、けれども今まで一度も逢った事は無し、またお互いにその作品を一度も読んだ事のない者どうしが、ふっとした事で、こうして長い手紙を交換する。縁と言ったってかまやしません。

このたび私の「惜別」が橋になって、あなたから長いお手紙をいただきましたが、私は、たいへんうれしかった。あなたのお手紙の文面が、やさしく正直なのも大きな悦びでありましたが、それよりも何よりも、私にはあのお手紙の長さが有難かったのです。本当にもうこのごろは、お互い腹のさぐり合いで、十年来の友人でも、あいまいな事をちょっとだけ書いて寄こして、あなたみたいに、長い手紙を書いてはくれません。何も用心しなくたっていいじゃないか。私がマ司令に密告するわけじゃあるまいし。

きょうは、あなたのお手紙の長さに感奮し、その返礼の気持もあり、こんな馬鹿正直の無警戒の手紙を差上げる事になりました。

私たちは程度の差はあっても、この戦争に於いて日本に味方をしました。馬鹿な親でも、とにかく血みどろになって喧嘩をして敗色が濃くていまにも死にそうになっているのを、黙って見ている息子も異質的ではないでしょうか。「見ちゃ居られねえ」というのが、私の実感でした。

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