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TORENDIA

幻の園

本文約6,700字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

三千坪の広い敷地に立つ古い屋敷で、両親が忙しく孤独な少年は、美しい祖母と二人で過ごす時間を何よりの楽しみとしていた。祖母からお化け屋敷の昔話を聞き、近所の少女みよ子と秘密を共有しながら、広い庭で空想的な遊びに没頭する。古里という幻の園を舞台に、少年が自身の内面や周囲の世界との関わりを通じて成長していく姿を描き、失われゆく日々の記憶と郷愁を綴る。

豊島与志雄

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🎧 幻の園 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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祖母はいつも綺麗でした。痩せた細そりした身体付で、色が白く、皮膚が滑かでした。殊に髪の毛が美事でした。多くも少くもないその毛は、しなやかに波うって、ぼーっと薄暮の色を呈していました。際立った白髪の交らない、全体の黒みがいちどに褪せたそういう髪を、私は他に見たことがありません。

祖母は病身のようでしたが、別に寝つくこともありませんでした。仕事という仕事をしたことがなく、手なぐさみに何かいじくったり、新聞や絵本をよんだり、またよく縁側の日向で、何にするのか、紙縒をよっていました。

私は兄弟姉妹がなく、ただ、一人ぽっちでした。祖父や両親は用が多かったので、祖母も一人ぽっちのようでした。それで私と祖母とは一番仲よく遊びました。夜になると床を並べてねて、祖母からいろんなお話をきくのが、私の何よりの楽しみでした。

そのお話の一つ――。

むかし、或るところに、お化屋敷がありました。誰も住む者もない家の裏庭に、菌がいっぱいはえていまして、そこにお化が出て、人をとって食べてしまうのです。どんなお化が出るのか分かりませんが、その裏庭にはいって、無事に戻って来た者は一人もありませんでした。

強い武士たちが、お化退治にやって来ました。先ず家の中にはいって、夜になるのを待ちうけて、裏庭へ出て行きますが、その菌のはえたところへ行くと、みんなお化に食べられてしまいました。どういうお化が出るのか見届けた者さえありませんでした。

ここに、一人の賢い若い武士がいました。昼間のうちに、その裏庭へ行って、よく調べてみましたが、大きな菌がいっぱいはえてるだけで、何の怪しい点も見つかりませんでした。

「この菌があやしい……。」

若い武士はそう考えました。そして夜になると、塩を袋一杯用意して、裏庭へ出ていきました。

ぼーっとした明るみがさしていました。彼はつかつかと庭の中にふみこみました。すると、一面にはえている菌が大きくなり、傘よりももっと大きくなって、彼を包みこもうとしました。その時彼は袋の中の塩をつかんでは、菌にふりかけました。塩がかかると、大きな菌はしおれしなびて、力がなくなりました。彼は刀をぬいて、それを切りはらいました。

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