父と子供たち
本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
平時の父親は大きな友人として子供たちの自由な世界を見守り、遊びに興じる一方、非常時には病熱に悩まされる子の魂を支える神秘的な存在となる。母親のいない環境で仲良く育つ子供たちは、自由であるがゆえに精神的な規律を学ぶ途上にあり、家に迎え入れた子猫への無邪気な愛撫を通じ、父親は彼らがまだ他者を厳しくしつける段階に至っていない未熟さと、その朗らかな愛情のあり方を綴る。
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平時にあっては、父親は子供たちにとって、一種の大きな友だちであり、且つ、雨露をしのぐ家屋のようなものである。時々相手になってくれ、またじっとそこに控えていてくれる、それだけで充分なのだ。その影で、子供たちは彼等自身の世界を持つ。
休暇になって、何かの興にかられ、三人の子供たちだけで相談しあって、いきなり宣言する。
「お父さま、あたくしたち、今晩徹夜するのよ。」
「え、徹夜……?」
「みんなで、一晩徹夜してみることにきめたの。お父さまは?」
「お父さまは……さあ……。」
云いしぶってるのがおかしくて、父も子供たちも笑いだしてしまう。がそのあとで暫くして、子供たちは父を誘いにくる。
「お父さま、今晩、お仕事がおありですか。」
「なぜ?」
「今ね、きくやが、アイスクリームをそう云いに行ったの。お父さまの分も一つありますよ。だから、それがくるまで、トランプをするの。」
もうそれにきめてるという顔付だ。だから父もその通りになる。四人でトランプの遊びをして、アイスクリームを一つずつたべて……さてそれから先は、もう、父親は書斎に籠ろうと、寝室に退こうと、全く自由だ。用は済んだのだ。
「おやすみなさい。」と子供たちは云う。
父親は寝る。子供たちは徹夜だ。
*
非常時にあっては、父親は子供たちに対して、一種神秘な力を持つ。子供たちはその力によりかかってくる。
三十九度以上の病熱になやまされてる子供のそばに、父親は殆んどつききりでいる。夜がふけて、看護婦はうつらうつらしている。覆いをした電灯の光のうす暗いなかで、熱にうかされた子供の大きな黒い瞳が、じっと父親の方に向けられる。何かを訴えてるようだ。
「なあに?」
「…………」
返事もなにもない、その沈黙のなかに、魂が溺れていく……。
「大丈夫よ。」
「…………」
「じきになおりますよ。」
「なおりますよ。」
「あしたから、熱がさがるの。」
「熱がさがるの。」
「今日は、いい気持だ。」
「いい気持だ。」
子供はうっとりと、赤ん坊のように父の言葉をまねている。
「だから、もう、ねんねしましょう。」
「ねんねしましょう。」
「おめめつぶりましょう。」
「おめめつぶりましょう。」
子供は眼をつぶる。