ジャン・クリストフ
本文約158,200字 ・ 読了時間 約317分
あらすじ(AIが作成しました)
音楽家ジャン・クリストフは老いを迎え、世俗の喧騒から離れて静謐な創作活動に没頭する。自身の過去の葛藤や苦難を抱えながらも、彼は魂の安らぎである音楽とともに新たな作品を追求し続ける。周囲の人々との交流を通じて孤独と向き合い、やがて来る終焉を予感しながらも、彼は自らの魂の遍歴を音楽に昇華させていく。やがて大河を渡る聖人のように、彼は音楽という聖なる重荷を背負いながら、生まれ変わる新たな明日へと向かって進みゆく。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
💰 この本を応援する(投げ銭)
序
予は将に消え失せんとする一世代の悲劇を書いた。予は少しも隠そうとはしなかった、その悪徳と美徳とを、その重苦しい悲哀を、その漠とした高慢を、その勇壮な努力を、また超人間的事業の重圧の下にあるその憂苦を。その双肩の荷はすなわち、世界の一総和体、一の道徳、一の審美、一の信仰、建て直すべき一の新たな人類である。――そういうものでわれわれはあった。
今日の人々よ、若き人々よ、こんどは汝らの番である! われわれの身体を踏み台となして、前方へ進めよ。われわれよりも、さらに偉大でさらに幸福であれよ。
予自身は、予の過去の魂に別れを告げる。空しき脱穀のごとくに、その魂を後方に脱ぎ捨てる。人生は死と復活との連続である。クリストフよ、よみがえらんがために死のうではないか。
一九一二年十月 ロマン・ローラン [#改丁]
新しき日
(汝いみじき芸術よ、いかに長き黎明の間……)
生は過ぎ去る。肉体と霊魂とは河水のごとく流れ去る。年月は老いたる樹木の胴体に刻み込まれる。形体の世界はことごとく消磨しまた更新する。そして不滅なる音楽よ、ただ汝のみは過ぎ去らない。汝は内心の海である。汝は深き魂である。汝の清澄な眸には、生の陰鬱な顔は映らない。汝から遠くに、燃えたてる日、渡れる日、いらだてる日などが、不安に追われ、何物にも定着さるることなく、雲の群れのごとく、逃げ去ってゆく。しかし汝のみは過ぎ去らない。汝は世界の外にある。汝一人で一の世界をなしている。星の輪舞を導く太陽と、引力と数と法則とを、汝は有している。夜の大空の野に煌めく畝をつける星辰――眼に見えぬ野人の手に扱われる銀の鋤――その平和を汝はもっている。