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TORENDIA

ジャン・クリストフ

本文約138,000字 ・ 読了時間 約277分

あらすじ(AIが作成しました)

父の死後、音楽家クリストフは深い喪失感と苦悶のなかにあった。家計を支えるため母と共に質素な住居へ移るが、自身の苦悩や、疲弊し衰弱する母との生活を通じて孤独を深める。青年となった彼は、禁断の愛や葛藤に直面し、音楽と生の意味を問い続けた。やがてゴットフリートという人物との対話を通じ、身の丈に合った誠実な生き方と、耐え忍ぶことで得られる再生への希望を見出し、自身の進むべき道を歩み始める姿を描く。

ロマン・ローラン Romain Rolland

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一 オイレル家

家は沈黙のうちに沈んでいた。父の死去以来すべてが死んでるかと思われた。メルキオルの騒々しい声が消えてしまった今では、朝から晩まで聞こえるものはただ、河の退屈な囁きばかりであった。

クリストフは執拗に仕事のうちに没頭していた。幸福になろうとしたことをみずから罰しながら、黙然として憤っていた。哀悼の言葉にもやさしい言葉にも返辞をしないで、傲然と構え込んでいた。日々の業務に専心し、冷やかな注意で稽古を授けた。彼の不幸を知ってる女弟子たちは、彼の平然さに気を悪くした。けれども苦しみを多少経験したことのある年上の人たちは、そういう外見上の冷淡さが、少年においてはいかなる苦悶を隠してることがあるかを、よく知っていた。そして彼を憐れんだ。しかし彼は彼らの同情をありがたいとも思わなかった。また音楽さえも、彼になんらの慰謝をも与えなかった。別に喜びの情をも感じないで、義務のようにして音楽をひいていた。あたかも彼は、もはや何事にも興味をもたないことに、もしくはそう思い込むことに、生存の理由をすべて失うことに、それでもなお生存することに、ある残忍な喜びを見出してるかのようだった。

二人の弟は、喪中の家の沈黙に慴えて、急に外へ逃げ出してしまった。ロドルフはテオドル伯父の商館にはいって、伯父の家に住んだ。エルンストの方は、二、三の職についてみた後、マインツとケルンとの間を往復してるライン河の船に乗り込んで、金のほしい時ばかりしか顔を見せなかった。それでクリストフは母と二人きりで、広すぎる家に残ることになった。そして収入の道もわずかだったし、父の死後にわかった若干の負債をも払わなければならなかったので、つらくはあったがついに決心して、もっと質素な安い住居を捜そうとした。

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