ジャン・クリストフ
本文約158,900字 ・ 読了時間 約318分
あらすじ(AIが作成しました)
フランスで生活する音楽家クリストフと友人のオリヴィエは、困窮しながらも創作を続ける。ある日、新聞で音楽的天才として報じられたことをきっかけに、クリストフは有力な新聞社社長から注目され、突然の名声を得る。その後、女優フランソアーズとの出会いや、オリヴィエの心境の変化を経て、彼らはそれぞれの苦難や孤独を乗り越えていく。クリストフとオリヴィエは、周囲の愛する人々と共に、魂の音楽である温情と愛を感じながら日々を歩む。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
💰 この本を応援する(投げ銭)
フランス以外で成功を博しかけていたにもかかわらず、クリストフとオリヴィエの物質的情況は、なかなかよくなってゆかなかった。きまってときどき困難な時期がやってきて、空腹な思いをしなければならなかった。その代わり金があるときには、平素の二倍も食べて補っていた。けれどそれも長い間には、結局身体を弱らす摂生法だった。
今またちょうど二人は不如意な時期にあった。クリストフは夜中過ぎまで起きていて、ヘヒトから頼まれた編曲の無趣味な仕事を片付けた。寝たのは明け方近くで、無駄なことに費やした時間を取り返すために、ぐっすり眠ってしまった。オリヴィエは早くから出かけていた。パリーの向こう側の場末で講義をしなければならなかったのである。八時ごろに、手紙を届けに来る門番の男が呼鈴を鳴らした。いつもならその男は、強いて起こさないで扉の下へ手紙を差し入れてゆくのだった。がその朝に限って扉をたたきつづけた。クリストフは寝ぼけながら、ぶつぶつ言って扉を開きにいった。門番は微笑しながら盛んにしゃべりたてて、ある新聞記事のことを言っていたが、クリストフはそれに耳を貸さず、顔も見ないで手紙を引ったくり、扉を押しやったままよくも閉めずに、また寝床にはいって、前よりもなおぐっすりと眠った。
一時間ばかり後にまた、彼は室の中の人の足音にはっと眼を覚ました。そして寝台の裾のほうに、見知らぬ顔の人が丁重に会釈してるのを見て、呆気にとられた。それはある新聞記者で、扉が開いてるのを見て遠慮なくはいり込んで来たのだった。クリストフは腹をたてて飛び起きた。
「何をしにここへ来たんです?」と彼は叫んだ。
彼は枕をつかんで、その侵入者に投げつけてやろうとした。侵入者は逃げ出すような態度をしたが、それから二人で話し合った。男はナシオン新聞の探訪員で、グラン・ジュールナル新聞に出た評論に関して、クラフト氏に面会したがってるのだった。
「どんな評論ですか。」
「まだお読みになりませんか。」
探訪員は説明の労をとってくれた。