本文へ移動
TORENDIA

ジャン・クリストフ

本文約102,900字 ・ 読了時間 約206分

あらすじ(AIが作成しました)

幼くして音楽の才能を発揮したクリストフは、貧しい家庭を支えるため宮廷楽団のヴァイオリニストとして自活する。周囲の無理解や社会的格差に苛立ち、自尊心を傷つけられる日々の中で、彼は父の死と向き合い、人生とは幸福を追うものではなく、絶え間ない争闘と苦難を乗り越えて一個の人間として完成していく過程であることを悟る。やがて少年は、自身の信念を貫くために孤独な戦いと成長の道を歩み始める。

ロマン・ローラン Romain Rolland

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 147

一 ジャン・ミシェルの死

三か年過ぎ去った。クリストフは十一歳になりかけている。彼はなおつづけて音楽の教育を受けている。フロリアン・ホルツェルについて和声を学んでいる。これはサン・マルタンのオルガニストで、祖父の友人であったが、いたって学者で、クリストフが最も好んでいる和音、やさしく耳と心とをなでてくれて、それを聞けばかすかな戦慄が背筋に走るのを禁じえない種々の和声は、いけないもので禁じられてるものだと教えてくれる。クリストフがその理由を尋ねると、規則で禁じられてるからという以外には、彼はなんとも答えない。クリストフは生来わがままな子だから、そういうものがなおさら好きになる。人に崇拝されてる大音楽家の作品中にその実例を見出すのを喜びとして、それを祖父か教師かのところへもってゆく。すると祖父は、大音楽家の作品中ではかえってりっぱになるのであって、ベートーヴェンやバッハなら何をしても構わないと答える。教師の方はそれほど妥協的でないから、機嫌を悪くして、それは彼らの作品のうちのいいものではないと苦々しく言う。

クリストフは音楽会や劇場にはいることができる。どの楽器でも鳴らすことを覚えている。すでにヴァイオリンにかけてはりっぱな腕前をもっている。父は管弦楽隊中の一席を彼に与えてもらおうと考えついた。クリストフはりっぱにその役目を勤めたので、数か月の見習の後、宮廷音楽団の第二ヴァイオリニストに公然と任命された。かくて彼は自活し始めてゆく。それも早過ぎるわけではない。なぜなら、家の事情はますます悪くなっているから。メルキオルの放縦はいっそうはなはだしくなっていたし、祖父は年をとっていた。

ロマン・ローラン Romain Rollandの他の作品

同じジャンルの朗読つきの本