猫吉親方
本文約5,700字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
粉ひき男の末の息子が、遺産として猫一匹を譲り受ける。その猫は主人の窮状を救うため、長ぐつを履き袋を携えて王のもとへ獲物を献上し、主人をカラバ侯爵と称して着実に信頼を築く。さらに猫は、領地を広大に見せかける策略を巡らせ、変身能力を持つ人食い鬼を計略で打ち負かし、彼の城を奪取する。結果、主人は王から認められ、王女との縁談が整い、猫も貴族として安穏な生活を手に入れる物語である。
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一
むかし、あるところに、三人むすこをもった、粉ひき男がありました。もともと、びんぼうでしたから、死んだあとで、こどもたちに分けてやる財産といっては、粉ひき臼をまわす風車と、ろばと、それから、猫一ぴきだけしかありませんでした。さていよいよ財産を分けることになりましたが、公証人や役場の書記を呼ぶではなし、しごくむぞうさに、一ばん上のむすこが、風車をもらい、二ばんめのむすこが、ろばをもらい、すえのむすこが、猫をもらうことになりました。すえのむすこは、こんなつまらない財産を分けてもらったので、すっかりしょげかえってしまいました。
「にいさんたちは、めいめいにもらった財産をいっしょにして働けば、りっぱにくらしていけるのに、ぼくだけはまあ、この猫をたべてしまって、それからその毛皮で手袋をこしらえると、あとにはもうなんにも、のこりゃしない。おなかがへって、死んでしまうだけだ。」
すえの子は、ふふくそうにこういいました。すると、そばでこれを聞いていた猫は、なにを考えたのか、ひどくもったいぶった、しかつめらしいようすをつくりながら、こんなことをいいました。
「だんな、そんなごしんぱいはなさらなくてもようございますよ。そのかわり、わたしにひとつ袋をこしらえてください。それから、ぬかるみの中でも、ばらやぶの中でも、かけぬけられるように、長ぐつを一そくこしらえてください。そうすれば、わたしが、きっとだんなを、しあわせにしてあげますよ。ねえ、そうなれば、だんなはきっと、わたしを遺産に分けてもらったのを、お喜びなさるにちがいありません。」
主人は猫のいうことを、そう、たいしてあてにもしませんでした。けれども、この猫がいつもねずみをとるときに、あと足で梁にぶらさがって、小麦粉をかぶって、死んだふりをしてみせたりして、なかなかずるい、はなれわざをするのを知っていましたから、なにかつごうして、さしあたりのなんぎを、すくってくれるくふうがあるのかもしれない、とおもって、とにかく、猫のいうままに、袋と長ぐつをこしらえてやりました。
二