本文へ移動
TORENDIA

織田信長

本文約17,800字 ・ 読了時間 約36分

あらすじ(AIが作成しました)

天下統一を志す織田信長は、野放しに育った腕白大将として、朝廷との関係や周囲の実力者たちとの駆け引きを通じてその実力を確立していく。本書は、朝廷からの綸旨による実力の承認、強敵との対峙、そして松永久秀との不可思議な友情を中心に、独自の生死観と悪魔的なカリスマ性を持つ信長の生き様を描く。

坂口安吾

🎧 まだ音声版はありません

リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 22

死のふは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりをこすよの ――信長の好きな小唄――

立入左京亮が綸旨二通と女房奉書をたずさえて信長をたずねてきたとき、信長は鷹狩に出ていた。

朝廷からの使者は案内役の磯貝新右衛門久次と使者の立入とたった二人だけ、表向きの名目は熱田神宮参拝というのである。

信長へ綸旨と女房奉書をだしては、と立入左京亮から話を持ちかけられた万里小路大納言惟房は、おまえ大変なことを言う、さても、困った、困った、と言った。

信長という半キチガイの荒れ武者がどれほど腕ッ節が強くて、先の見込みのある大将だか知らないけれども、目下天下の権を握っている三好一党と、その又上に松永弾正という蛇とも妖怪ともつかないような冷酷無慙なジイサンの睨みが怖しい。まったく弾正久秀という奴は蛇も妖怪も及びがたいジジイだけれども、たまには米もたらふく食いたいし、冬には温いフトンも慾しいじゃないか。雲の上人とは、よく言った。雲の上へまつりあげられて、薄いフトンで寒風をしのぎ、あるなしの米をすすって細々とその日のイノチをつないでいるのである。大納言のみならんや。上皇も、天皇も、そうなのである。

これは後日の話であるが、信長が天下を握って、御所を修理したり、お金を献上したり、色々と忠勤をつくして朝廷の衰微を救ったという。このとき、信長が京都の町民に米を貸して、その利息米を朝廷の経済に当てる方法を施した。この利息米のアガリが大体一ヶ月に十三石ぐらいであった。十三石の半分を朝廷で細々とたべる。半分を副食物や調味料にかえる。信長が衰微を救ったという。救われて、ようやく、これぐらいのもので、雲の上人は、まったく悲惨な生活であった。

天皇は皇子皇女をたいがい寺へ入れる。皇女の方は尼だ。関白も大納言も、そうだ。足利将軍もそうだ。子供は坊主や尼にする。門跡寺、宮門跡などと云って、その寺格を取引にして、お寺から月々年々の扶持を受けるという仕組であった。そのほかには暮しの手だてがなかった。

坂口安吾の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本