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TORENDIA

雪霊続記

本文約6,000字 ・ 読了時間 約12分

あらすじ(AIが作成しました)

越前武生の町で大雪のため汽車が不通となり、かつて想いを寄せた女性を訪ねようと吹雪の中へ踏み出した旅人は、極寒の猛威に命の危機を感じながら彷徨う。やがて鎮守の社を過ぎて中学校へ辿り着くと、そこでは七年前に凍死した軍事演習隊と嚮導犬の霊が、命日の供物を受け取るために雪中行軍を再現する異様な光景を目の当たりにする。翌朝、学校の廊下で倒れていたところを救助された旅人は、その土地に伝わる遭難の記憶と不思議な霊の存在に触れることとなる。

泉鏡花

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一

機会がおのずから来ました。

今度の旅は、一体はじめは、仲仙道線で故郷へ着いて、そこで、一事を済したあとを、姫路行の汽車で東京へ帰ろうとしたのでありました。――この列車は、米原で一体分身して、分れて東西へ馳ります。

それが大雪のために進行が続けられなくなって、晩方武生駅(越前)へ留ったのです。強いて一町場ぐらいは前進出来ない事はない。が、そうすると、深山の小駅ですから、旅舎にも食料にも、乗客に対する設備が不足で、危険であるからとの事でありました。

元来――帰途にこの線をたよって東海道へ大廻りをしようとしたのは、……実は途中で決心が出来たら、武生へ降りて許されない事ながら、そこから虎杖の里に、もとの蔦屋(旅館)のお米さんを訪ねようという……見る見る積る雪の中に、淡雪の消えるような、あだなのぞみがあったのです。でその望を煽るために、もう福井あたりから酒さえ飲んだのでありますが、酔いもしなければ、心も定らないのでありました。

ただ一夜、徒らに、思出の武生の町に宿っても構わない。が、宿りつつ、そこに虎杖の里を彼方に視て、心も足も運べない時の儚さにはなお堪えられまい、と思いなやんでいますうちに――

汽車は着きました。

目をつむって、耳を圧えて、発車を待つのが、三分、五分、十分十五分――やや三十分過ぎて、やがて、駅員にその不通の通達を聞いた時は!

雪がそのままの待女郎になって、手を取って導くようで、まんじ巴の中空を渡る橋は、さながらに玉の桟橋かと思われました。

人間は増長します。――積雪のために汽車が留って難儀をすると言えば――旅籠は取らないで、すぐにお米さんの許へ、そうだ、行って行けなそうな事はない、が、しかし……と、そんな事を思って、早や壁も天井も雪の空のようになった停車場に、しばらく考えていましたが、余り不躾だと己を制して、やっぱり一旦は宿に着く事にしましたのです。ですから、同列車の乗客の中で、停車場を離れましたのは、多分私が一番あとだったろうと思います。

大雪です。

「雪やこんこ、

霰やこんこ。」

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