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TORENDIA

初雪

本文約10,000字 ・ 読了時間 約20分

あらすじ(AIが作成しました)

ノルマンディーの貴族と財産目的の結婚をした若い女は、寒冷な地での孤独と夫の無理解に苦しみ、肺を病む。療養のため南仏のカンヌを訪れた彼女は、北国へ帰れば死が待つと予感しながらも、夫からの手紙でかつて切望した煖房が用意されたことを知る。死を目前にした彼女の心境と、彼女を縛り付けた結婚生活の断片を描き、迫りくる北国の冬の気配と、それに対比される南国の穏やかな日差しの中で繰り広げられる運命的な物語。

モオパッサン

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長いクロワゼットの散歩路が、あおあおとした海に沿うて、ゆるやかな弧を描いている。遥か右のほうに当って、エストゥレルの山塊がながく海のなかに突き出て眼界を遮り、一望千里の眺めはないが、奇々妙々を極めた嶺岑をいくつとなく擁するその山姿は、いかにも南国へ来たことを思わせる、うつくしい眺めであった。

頭を囘らして右のほうを望むと、サント・マルグリット島とサント・オノラ島が、波のうえにぽっかり浮び、樅の木に蔽われたその島の背を二つ見せている。

この広い入江のほとりや、カンヌの町を三方から囲んで屹立している高い山々に沿うて、数知れず建っている白堊の別荘は、折からの陽ざしをさんさんと浴びて、うつらうつら眠っているように見えた。そして遥か彼方には、明るい家々が深緑の山肌を、その頂から麓のあたりまで、はだれ雪のように、斑に点綴しているのが望まれた。

海岸通りにたち並んでいる家では、その柵のところに鉄の格子戸がひろい散歩路のほうに開くように付けてある。その路のはしには、もう静かな波がうち寄せて来て、ざ、ざあッとそれを洗っていた。――うらうらと晴れ亙った、暖かい日だった。冬とは思われない陽ざしの降り濺ぐ、なまあたたかい小春日和である。輪を囘して遊んでいる子供を連れたり、男と何やら語らいながら、足どりもゆるやかに散歩路の砂のうえを歩いてゆく女の姿が、そこにもここにも見えた。

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