TRENDIA CLASSIC

新劇倶楽部創立に際して

岸田國士

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非常に漠然とした提議の内容でありましたが、それにも拘はらず大体の趣旨に御賛成の上でありませう、今日、わざわざここへお集り下さいましたことは、私として感謝にたへません。

実は、今日の集りは、なるべく固苦しい論議をさけて、いはば、お互に顔を知り合ひ、何かしらそこに、同じ仕事にたづさはつてゐる者同士の親しみ、しかも、めいめいが自分の仕事の領域を通じて、幾分でも共通の利害、共通の希望をもち合つてゐることを感じ合ふことができるやう、話を進めたいと思ふのでありますが。

元来、私は、何事によらず、先頭に立つとか、音頭を取るとかいふことは、その任でないのみならず、性来、甚だ好まないのでありまして、今日の会合の如きも、誰かが提議をして下されば、それに越したことはなかつたのであります。

ただ、事態はやや、それを待つことを許さないといふ気がいたしました。

と云ひますのは、御承知の通り、最近、新劇行詰りの声が聞え、その対策について、各方面でいろいろな論議が交はされてをりますが、その論議たるや、多くは何等かの主張に基く一個の芸術論でありまして、それは固より結構であるとしても、それだけでは、各人各個の仕事を特色づけることにはなりませうが、一般演劇界の注意と関心を惹くに足りないやうに思はれます。仮にまた、もつと根本の問題について誰かの意見が発表されたとしましても、これまた多くは、単に批評的であるか、又は、消極的助言にすぎませんから、「なるほどそれに違ひない」と云つて、すまされてゐるやうな状態であります。

殊に、最も、注意すべきは、それらの論議そのものに於て、われわれは、真に、相手の「精神」を汲み取つてゐるかどうかといふことです。

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