ゼンマイの戯れ(映画脚本)
本文約18,100字 ・ 読了時間 約37分
あらすじ(AIが作成しました)
事務員として働く笠原平造は、特許取得を夢見て日々発明に没頭する。職場や家庭での生活を送りつつ、日常の些細な出来事を次なる発明の着想へと結びつけ、周囲の期待や不安をよそに試行錯誤を繰り返す。次第に生活が困窮する中、平造は家族の前で拳闘独楽を披露し、成功を確信して熱中する。本作は、妄想と現実の狭間で揺れ動く男の情熱と、それを見つめる家族の姿をゼンマイ仕掛けの比喩を交えて描く映画脚本である。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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主なる人物
笠原平造 四十六才
妻たけ子 四十二才
長男政一 二十三才
娘 富子 二十才
次男圭次 八才
北野良作 四十五才
安田某 二十六才
此の「物語」は、特別の指定以外、どの部分を画面で表し、どの部分を字幕で、また、どの部分を「説明」で補はうとも、それは監督の自由である。たゞ、各場面々々の印象を、映画的に活かして貰へばいゝ。
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第一巻
1
古ぼけた柱時計が大きく映る。針が零時十五分を指してゐる。 捩子を持つた男の右手が現はれる。時計を捲き始める。針を九時に直す。 振子を振つて見るが、すぐ止まつてしまふ。
2
時計の内部が映る。ゼンマイが外れる。 そのゼンマイが、幕一杯に大きく映る。そして、今度は、それが急速度で廻転し始める。すると、その中心から、白い華車な女の右手が現はれる。人差指を出して、何かを指し示してゐる。 此の画面が次第に消えて、次の情景が写し出される。
3
笠原平造は、日当のいゝ椽先にあぐらをかいて、一心に小刀を動かしてゐる。見ると、玩具の船が出来かけてゐる。傍らに、圭次が、おとなしくそれを見てゐる。もう、帆をかけるばかりである。 妻のたけ子は庭の一隅で張物をしてゐる。 船ができ上つたので、平造は盥に水を入れて、それを浮かして見る。圭次がよく遊んでゐるのを見て、平造は鶏小屋に近づく。金網の破れたところを繕ふ。 富子は母に何かせがんでゐる様子である。 ――お父さん、富子が、お友達のとこへ行きたいつて云ひますよ。 平造の慈愛と威厳とを無器用に交へた表情。 ――今日はやめとけ。後でお客さんがあるから……。 富子の不服らしい顔附。 母親の富子をたしなめてゐる様子。 平造は、娘の気を惹くやうに、 ――安田が、また、トランプをしに来るつて云つとつた。 富子、相変らず不機嫌である。しかし、どうにもならないことを知ると、急に、何もなかつたやうな顔して、奥に姿を消す。 平造は、鶏小屋を離れると、今度は、花壇の方へ歩を運ぶ。草花の新芽がのびてゐる。それに、軽く指をふれながら、誰に云ふともなく、 ――今年は芍薬がよく出た。
4