コポオの弟子たち
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あらすじ(AIが作成しました)
パリへ留学した著者は、強い希望を抱き、ヴィユウ・コロンビエ座を主宰するコポオのもとを訪ねる。熱意を認められた著者は、ジュウヴェやバケエといった俳優たちとの交流を通じて、同座の稽古や教育の現場を二年間にわたり見守ることとなる。本作は、その舞台裏で得た鮮烈な経験と、後に名優へと成長したかつての仲間たちの姿、そして劇団を支えた文学グループとの深い結びつきを回想し、当時のフランス演劇が持つ革新的な意義を綴る。
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今の日本ではさういふことはあるまいけれど、私が三十年前にパリへ出掛けた頃は、仏蘭西に於ける新しい演劇界の消息といふものは、かいもく見当がつかぬ有様であつた。
パリにつくと、めくらめつぱふに芝居をみて歩き、新聞や雑誌をあさつて目星しい作家や劇団を名をひろひ、新刊旧刊の書物をむさぼり読んで、それでもひととほり、その時代の演劇地図を頭にいれるまで、たつぷり一年はかかつたと思ふ。
ヴィユウ・コロンビエ座の存在をやつとつきとめたとき、私の胸はをどつたけれども、変り目ごとの公演を欠かさず観るのがせいぜいで、その内部に接触をもとめることなど、無名にして貧寒な一外国青年の及びもつかぬことだと、半ばあきらめてゐたが、遂に意を決して、かねがねたまにその講義をのぞいてみたことのあるソルボンヌ大学のルボン教授に、私の希望を伝へたところ、至極手軽にコポオへの紹介状を書いてくれた。
私は、勇んでといひたいが、実は、臆する自分を鞭ちながら、はじめてヴィユウ・コロンビエの裏門をくぐり、大道具製作場の乱雑な通路をぬけて、ここと教へられた舞台横手の小部屋をノックしたのである。
まだ稽古のはじまつてゐない閑散な一つ時であつた。小部屋は粗末なテーブルと椅子とが舞台に背を向けておいてあるだけで、もうあらかた場所をふさいでしまふやうな窮屈な部屋であつた。舞台に面して斜に格子窓が開いてゐる舞台監督専用の見張場である。コポオがひとり、その椅子にかけて、たしかタイプで打つた台本を読んでゐた。