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TORENDIA

加藤道夫の死

本文約1,200字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

急逝した劇作家加藤道夫の足跡と、彼を喪った深い喪失感を綴る。処女作「なよたけ」で見せた類まれな才能と演劇への野心、戦後の疲労と焦燥、そして後進の精神的支柱として果たした役割を回想する。残した作品量は少ないが、未来への可能性を豊かに秘めていた劇作家の生涯を辿り、今もなお演劇関係者の心に生き続けるその存在の大きさと、次代へ繋ぐはずであった芥川比呂志との運命的な出会いについて、親友の立場から惜別の想いを込めて記す。

岸田國士

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🎧 加藤道夫の死 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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またひとり、作家が自殺した、といふ感じ方でこのニュウスを受けとつた人々がずいぶんたくさんあつたと思ふ。

私は、とくに身近な友人の一人として、彼が死を撰んだ理由を正確につかみたいのだがいろいろの事情を綜合して考へても、最も重要なたゞ一つの理由を挙げることは不可能だといふ結論に達した。

彼の所属していた文学座に宛てた遺書に、「芸術上の行き詰り」といふ理由をはつきり告白してゐるけれども、彼が主観的にさう考へることそのことが、われわれには納得しかねるほど、客観的には、多くの支持者に取り巻かれ、多彩な仕事のプランと取り組み、着々それを実行に移してゐたのである。

彼は、時に、甚だ遅筆らしく見えた。しかし、それは、彼の野心が、彼の想像力を圧倒した時であるやうに思はれる。

その処女作「なよたけ」は西欧的教養の燈火をかゝげて、わが古典の林に踏み入り、そこに演劇の泉を汲まうとした幼々しい試みが半ば成功したといつていゝ注目すべき新鮮味をもつた戯曲で、彼の劇作家としての力量は既に、この一作によつて高く評価された。

忘れてならぬことは、この凜然としたところのあるロマンチックな作品が、戦争中に、発表の目当てもなく書かれたことである。

ニューギニヤ戦線から幸ひに帰還することができた彼は、直ちに自己の体験に基く諷刺劇「エピソード」を発表上演したにも拘はらず、それ以後の作品には、どこか疲労と焦燥の影がみえ、われわれが期待した第二の傑作は容易に生れなかつた。

その代り、たしかにその代り、彼は、新劇の若いジェネレーションの精神的支柱の一人となり、やゝもすれば目標を見失はうとする一群の後輩の先登に立つて、確信と情熱に満ちた道案内の役をつとめた。

作家のさういふ役割は、実際において、報いられるところ、あまりに少いのである。

しかし、彼は、まだまだ仕事を始めたばかりである。

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