TRENDIA CLASSIC

耳長さん と あひるさん

村山籌子

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ある朝のことです。耳長さんが、一人でランニングのおけいこをしてをりますと、一匹のあひるさんが、そばへやつて来ました。とても、ずるい、小さな、真白いあひるさんです。そして、耳長さんに言ひますのに

「僕、とても面白いあそびを知つてんだよ。」

そこで、耳長さんは、気が弱いのに、何でも知りたがるくせがあるので、早速その話にのつて、目を丸くして言ひました。

「何? 面白いあそび?」

「ボタン遊びさ。」と、あひるさんが勿体ぶつて答へました。

「ボタン遊びつて、僕知らないよ。教へてね。」と、耳長さんはあひるさんの手を引つぱりました。

「とてもやさしいの。そして、勝つた方が、ボタンをもらへるの。」と、あひるさんはボタン遊びを、耳長さんに話してやりました。耳長さんは、すぐ勝てるやうな気がしました。そして山程勝つたボタンをもつてかへつたら、お母さんがどんなに喜ぶだらうと思ひました。

「いくつボタンお家から持つてくればいゝの?」と耳長さんが聞きましたら、あひるさんは

「家から取つて来なくたつて、ホラ、ここにあるぢやないか。」と言つて耳長さんの洋服についてゐるボタンを引きちぎりました。耳長さんは、なる程、いゝ考へだと思つて、大喜びで、それを出して遊びましたが、負けてしまひました。耳長さんはがつかりしました。

「今度は、キツト君が勝つよ。」と、あひるさんが言ひますので、耳長さんは又その気になつて、ボタンをちぎつて出しました。そして、着物についてゐるボタンは一つのこらず負けてしまひました。

あひるさんは、勝つたボタンをザラザラとポケツトに入れて「グツドバイ、バイ。」と言つて飛んでつてしまひました。

お家へ帰りましたら、耳長さんは、さんざんにお母さんに叱られました。

「早くベツドへ行つておやすみ。母さんがボタンをつけといてあげますから。何てお前さんはお馬鹿さんだらう。明日、学校の先生にさうお話ししなくちやなりません。」

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