二階の窓までのびたチユーリツプ
本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分
あらすじ(AIが作成しました)
桃色の首輪をしたお猫さんは、庭で出会った草の芽を土から現れるもぐらもちだとからかう。正体を否定され立腹したチューリップの芽は、自らの正体を証明しようと猛烈な勢いで伸び、二階の窓まで到達する。その異常な光景に驚いた本子奥さんは、屋根に登り花を摘む。意地を張って感情的になることで引き起こされた、不思議なチューリップと周囲の騒動を描く。
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あるお家に かあいいお猫さんがかはれてゐました。えりまきのかはりにもも色の首輪をつけて、たいへんハイカラにみじまひしてゐました。
或日、お庭をさんぽしてゐると、とつぜん、目のまへの土がムクムクとふくれて、その中から小さい草の芽が 頭をだしました。お猫さんはそんなものを見たのは はじめてでしたから、腰をぬかさんばかりにおどろきましたが、心をしづめて、「こんにちは、もぐらもちさん」といひました。草の芽は大さうおこつて「私、もぐらもちぢやありませんわ。チユーリツプといふ花の芽よ。」
猫は鼻のさきで せせらわらつて、
「土の中から、ムクムク出て来るのは もぐらもちにきまつてゐるさ。」といひました。
「いいえ。私、チユーリツプよ。私の咲かせる花は あなたの首輪とおなじもゝ色だけれど、うつくしいことにかけては もつともつとうつくしいの。」まけぎらひなチユーリツプは、ツンとすましていひました。
お猫さんは、おほわらひしました。
「もゝ色の首輪をしたもぐらもちなんて、ぼくうまれて いちどもみたことないや。」
チユーリツプの芽は、腹がたつてもうがまんができなくなりました。
「ぢや、みていらつしやい、私がもぐらもちぢやなくて、チユーリツプだつてことを、たつたいまここでみせてあげるから。」さういつて、全身に力をいれました。ところが、あんまり力を入れすぎたので、みるみるうちにたいへんな、いきほひでのびました。またたくうちに屋根をこしてお二階のまどのところまで とどきさうになりました。チユーリツプはびつくりしてやつとのことで、ふみとまりました。そして、そこで それはそれは、うつくしいもゝ色の花をさかせました。
ちようどお二階のまどのうちで、あたゝかい日をあびて本をよんでゐた、本子奥さんは 去年の秋まいた、せいぜい一尺も大きくならないはずのチユーリツプが、屋根をこすほど長くのびてゐる ふしぎな光景をみて、あつけにとられました。いくらかんがへても、そのわけがわかりませんでした。