本文へ移動
TORENDIA

二階の窓までのびたチユーリツプ

本文約1,000字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

桃色の首輪をしたお猫さんは、庭で出会った草の芽を土から現れるもぐらもちだとからかう。正体を否定され立腹したチューリップの芽は、自らの正体を証明しようと猛烈な勢いで伸び、二階の窓まで到達する。その異常な光景に驚いた本子奥さんは、屋根に登り花を摘む。意地を張って感情的になることで引き起こされた、不思議なチューリップと周囲の騒動を描く。

村山籌子

速度
🎧 二階の窓までのびたチユーリツプ / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

あるお家に かあいいお猫さんがかはれてゐました。えりまきのかはりにもも色の首輪をつけて、たいへんハイカラにみじまひしてゐました。

或日、お庭をさんぽしてゐると、とつぜん、目のまへの土がムクムクとふくれて、その中から小さい草の芽が 頭をだしました。お猫さんはそんなものを見たのは はじめてでしたから、腰をぬかさんばかりにおどろきましたが、心をしづめて、「こんにちは、もぐらもちさん」といひました。草の芽は大さうおこつて「私、もぐらもちぢやありませんわ。チユーリツプといふ花の芽よ。」

猫は鼻のさきで せせらわらつて、

「土の中から、ムクムク出て来るのは もぐらもちにきまつてゐるさ。」といひました。

「いいえ。私、チユーリツプよ。私の咲かせる花は あなたの首輪とおなじもゝ色だけれど、うつくしいことにかけては もつともつとうつくしいの。」まけぎらひなチユーリツプは、ツンとすましていひました。

お猫さんは、おほわらひしました。

「もゝ色の首輪をしたもぐらもちなんて、ぼくうまれて いちどもみたことないや。」

チユーリツプの芽は、腹がたつてもうがまんができなくなりました。

「ぢや、みていらつしやい、私がもぐらもちぢやなくて、チユーリツプだつてことを、たつたいまここでみせてあげるから。」さういつて、全身に力をいれました。ところが、あんまり力を入れすぎたので、みるみるうちにたいへんな、いきほひでのびました。またたくうちに屋根をこしてお二階のまどのところまで とどきさうになりました。チユーリツプはびつくりしてやつとのことで、ふみとまりました。そして、そこで それはそれは、うつくしいもゝ色の花をさかせました。

ちようどお二階のまどのうちで、あたゝかい日をあびて本をよんでゐた、本子奥さんは 去年の秋まいた、せいぜい一尺も大きくならないはずのチユーリツプが、屋根をこすほど長くのびてゐる ふしぎな光景をみて、あつけにとられました。いくらかんがへても、そのわけがわかりませんでした。

村山籌子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本