けふは おほかぜくんは たいへん いいごきげんでした。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ」
これが おほかぜくんの うたです。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ。なにかいたづらを してやらう。」
おほかぜくんは とんでいつて、こどもの ぼうしを ふきとばした。
ピユウツ、コロ、コロ、コロ、コロ と ぼうしは とんでゆきました。
「ぼくのぼうしが とばされた。だれかつかまえて。」とこどもは おほごゑで いひましたが、のはらのまんなかで、だれもゐません。
「おもしろい、おもしろい。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
おほかぜくんは のはらをこえ、たんぼをこえて、やまのはうに ふいてゆきました。
すると やまのふもとに ちいさな ちいさな ひつじのこが、くさをたべてゐました。
「やあ ちいさいやつだな。一つふきとばしてやれ。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
ひつじのこは ピユウツ、コロ、コロ、コロ、とふきとばされて、おほかぜくんが とほりすぎてしまふまで、どうしても おきあがることが できませんでした。
「おもしろい、おもしろい、ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
おほかぜくんは やまをこえて、まちのはうへ ふいてゆきました。
「おもしろい、おもしろい。ぼくが ヒユウ と ふけば、なんでもかんでも ふきとばされてしまふ。まちでも なんでも、すぐふきとばしてしまふぞ。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
まちのいりぐちに、おほきな いしのへいが たつてゐました。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ。おやおや、これは すこし つよさうだぞ。だが ぼくが ふけば すぐふきとばされて しまふさ。それ、ゆけ。ヒユウ ヒユウ ヒユウ。」
おほかぜくんは うん と ちからをいれて ふきました。だが、いしのへい は びくともしません。
「ヒユウ ヒユウ ヒユウ。こいつは なまいきなやつだ。よし、こんどこそ ふきとばしてくれるぞ。」
おほかぜくんは うまれてから まだ だしたことのないやうな、ちからを だして、ふきました。
だが どうしたことでせう。
いしのへいは びくともしません。どこをかぜがふくか といふかほをして へいきでたつてゐます。
おほかぜくんは すつかり はらをたてました。